王者ソフトバンクに忍び寄る“編成のツケ” 山本祐大の緊急補強でも埋まらない弱点

スポーツ 野球

  • ブックマーク

選手に対する“見切り”が

 新人選手を獲得するスカウティング以外にも、気になる点がある。ソフトバンクから他球団に移籍して飛躍する選手の多さだ。

 投手では加治屋蓮(2013年1位・現楽天)、田中正義(2016年1位・現日本ハム)、大竹耕太郎(2017年育成4位・現阪神)、甲斐野央(2018年1位・現西武)らが、移籍先で戦力となっている。野手でも三森大貴(2016年4位・現DeNA)、増田珠(2017年3位・現ヤクルト)、水谷瞬(2018年5位・現日本ハム)、佐藤直樹(2019年1位・現楽天)らが新天地で出場機会を増やした。

 現在は怪我で出遅れているものの、上林誠知(2013年4位・現中日)やリチャード(2017年育成3位・現巨人)も昨年は結果を残している。彼らはFA権を行使して移籍したのではなく、戦力外、現役ドラフト、トレードなどでソフトバンクを去った選手たちだ。

 この現状について、前出の編成担当者はこう話す。

「ソフトバンクはドラフトでも育成選手を多く指名しますし、実績のある選手も獲得する。そうなると、どうしても選手に対する“見切り”が早くなります。もう少し我慢して使うことができない。そんな選手が他球団でチャンスを与えられて開花していると言えるでしょう。山本の獲得はもちろん大きいですが、尾形と井上もDeNAで大活躍するかもしれません」

 他球団からソフトバンクに移籍した選手では、一昨年の現役ドラフトでDeNAから獲得した上茶谷大河が今年中継ぎとして活躍している。それ以外に目立つ選手は少ない。これも編成上の課題と言えるだろう。

 山本の獲得は、確かに大きな補強である。先発投手陣の不振、ドラフトで獲得した選手の停滞、移籍後に他球団で開花する選手の多さを見ると、ソフトバンクが抱える問題は決して小さくない。

 昨年日本一に輝き、今年も優勝候補の筆頭と見られていたソフトバンク。山本の補強をきっかけに再び上昇気流に乗れるのか。それとも、編成面の課題がこのまま響くのか。フロント、首脳陣の手腕が問われることになりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。