イチロー逃走劇、振り逃げ2ラン、濃霧コールド…地方球場で起きた“あり得ない一幕”

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 5月12日に青森県弘前市のはるか夢球場で行われた楽天対オリックスで、外野席のすぐ後ろを電車が走る風景の動画を見たファンの間で、「こんな近くを通っていたんだ」など驚きの声が上がった。【久保田龍雄/ライター】

坊っちゃんスタジアムで起きたまさかの逆転劇

 プロ野球では毎年、ゴールデンウィーク前後から秋頃にかけて地方開催試合が組まれている。本拠地とは環境や構造が異なる地方球場では、思わぬ光景やハプニングが生まれることも少なくない。ときには、それが試合の流れや記録にまで影響を与えることがある。

 広いファウルゾーンが、まさかの最終回逆転劇をもたらしたのが、2012年7月3日に愛媛県の松山坊っちゃんスタジアムで行われた阪神対広島だ。

 2点を追う広島は9回2死から、代打・迎祐一郎と天谷宗一郎の連打で出塁。さらに代打のドラフト2位ルーキー・菊池涼介が、左前にプロ初打点となるタイムリーを放ち、1点差に迫った。

 天谷、菊池の重盗でなおも2死二、三塁とチャンスを広げたが、次打者・梵英心はカウント2-2から榎田大樹の6球目、外角スライダーを空振り。三振でゲームセットと思われた。

 ところが、ボールゾーンに曲がった球を捕手・小宮山慎二が捕球できず、記録は暴投。ボールは広い一塁側ファウルゾーンを転々とした。この間に三塁走者だけでなく、二塁走者・菊池も生還。広島は“振り逃げ2ラン”の珍プレーで逆転勝ちを収めた。

 坊っちゃんスタジアムは中堅122メートル、両翼99.1メートル。ファウルゾーンも含めたグラウンド全体の総面積は約1万4300平方メートルとかなり広い。これに加え、二塁走者の菊池も50メートル5秒9の俊足だった。本来なら三塁走者の生還だけで終わっても不思議ではなかったプレーが、一気に逆転という結果につながった。

 拾い物とも言うべき勝利に、広島・野村謙二郎監督は「大きいのを打てるのはいないから、ああいうところで、リスクを負って走ったから、還ってこられた。こんな試合はなかなかない」と興奮気味に語った。

 一方の阪神は、守護神・藤川球児、正捕手・藤井彰人の負傷離脱により、守護神、捕手ともに代役。最後の最後で経験不足が裏目に出た。榎田は「少し焦ってしまった。2死から落ち着いて投げれば良かった」と後悔しきり。和田豊監督も「考えられないことが起きている」と信じられない様子だった。

 この出来事は、阪神ファンの間で今も“松山の悲劇”として語り継がれている。

不運過ぎる

 5回濃霧コールドゲームが悲喜こもごもの結果をもたらしたのが、2000年5月9日に米子市民球場で行われたオリックス対近鉄だ。

 パ・リーグの防御率1位・川越英隆、同2位の前川勝彦の両先発で始まった試合は、投手戦の予想を覆し、ノーガードの大乱打戦となった。

 まず前川が初回に5四死球と3本のタイムリーを浴び、2死を取っただけで、まさかの8失点KO。近鉄も川越を滅多打ちにし、2回に一挙7点を奪った。7対10の5回には、4番・ローズの右越え場外弾で2点差に詰め寄った。

 ところが、その裏のオリックスの攻撃で、先頭の日高剛が右前安打で出塁し、無死一塁となった直後、霧が立ち込めて試合は中断。61分後の午後9時28分にコールドゲームが宣告された。

 米子測候所によれば、昼間の最高気温25.9度から午後8時半の時点で15.3度と一気に冷え込んだことで、放射冷却現象により濃霧が発生。風に乗って球場に流れ込んだのが原因だという。

 せっかくの追い上げムードに水ならぬ“霧”を差され、8対10で敗れた近鉄・梨田昌孝監督は「残念やな。ようやくゲームになりかけたところで、こんな霧が出るとは思わなかった。不運過ぎる」とボヤきにボヤいた。

 一方、霧の思わぬ恩恵にあずかったのが、5回無死から川越をリリーフし、1イニングを無失点に抑えた小倉恒だった。試合が5回で打ち切られたため、思いがけずセーブが記録され、5試合連続セーブのオマケ付き。「えっ、セーブ付くんですか。ラッキーですね」と笑いが止まらなかった。

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