イチロー逃走劇、振り逃げ2ラン、濃霧コールド…地方球場で起きた“あり得ない一幕”

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我を忘れてイチローに突撃

 オリックス時代のイチローが、グラウンドに乱入したファンに追いかけられる事件が起きたのが、1996年4月16日に鹿児島県鹿児島市の県立鴨池球場(現・平和リース球場)で行われたロッテ戦だ。

 事件は、オリックスナインが7回の守備に就こうとしたときに起きた。興奮した若い男性ファンが突然外野席からグラウンドに飛び降りると、叫び声を上げながら、センターを守るイチローめがけて突進していった。

 パ・リーグは同年から外野の線審が廃止され、近くには間に入って止めてくれる人もいない。

「何を言っていたかわからないけど、怖かったですよ」

 試合どころではなくなったイチローは、全力疾走で左翼方面に緊急避難する羽目になった。間もなく男性は警備員に取り押さえられて事なきを得たが、酒を飲みながら観戦しているうちに気が大きくなり、我を忘れてイチローに突撃してしまったという。

 ちなみに同球場では、1978年7月28日から開催予定だったクラウン対ロッテ3連戦が、桜島の噴火による降灰の影響で3試合とも中止になる出来事も起きている。

 2022年8月23日に釧路ウインドヒル北海道スタジアムで行われた日本ハム対オリックスも、濃霧の影響により視界が悪化。日没時間より2時間近く早い午後4時7分、異例の7回日没コールドゲームが宣告され、0対0で引き分けた。

 球場の広さ、濃霧、降灰、そして思わぬファンの乱入。本拠地では考えにくい出来事が、地方球場では時に試合の流れまで変えてしまう。

 もちろん地方開催は、年に一度のファンサービスの機会でもある。だが、そこで刻まれるのは勝敗だけではない。球場の構造、土地の気候、観客との距離感が重なり、本拠地では起こり得ないドラマが生まれる。

 はるか夢球場の外野席裏を走る電車にファンが驚いたように、地方開催にはまだ知られていない景色がある。そうした“いつもと違う野球”に出会えることも、地方開催の大きな魅力だ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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