高橋一生が「勝ち組エリート社長」から「潰れかけクリーニング屋の息子」に! 観ないと後悔する“転生モノ”

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 タイムスリップには食傷気味、転生モノならアニメの方が断然面白い……そう思って観なかった人は、たぶん、いや絶対、後悔する。「リボーン」の話をしよう。

 傲慢で冷酷無比のIT企業社長・根尾光誠は、何者かに押されて階段から転落。目を覚ますと、自分が立ち退きを迫っていた赤字商店街の潰れかけたクリーニング屋の息子・野本英人(えいと)に転生していた。顔はそもそも瓜二つという偶然。しかも時は14年さかのぼった2012年。進まない復興、国力低下の悪政と悲劇、想定外の疫禍が待ち受ける、絶妙な時代へのタイムスリップである。

 ビジネスのひらめきと才能と過去の記憶はそのまま、体は若返り、老眼は消え、と好条件ではあるが、自分とは正反対の馬鹿がつくほどお人よしに転生しちゃって、さあ大変。親の愛も人の情も恋する心も知らずに、ただただのし上がってきた根尾が、義理と人情と持ちつ持たれつの善人貧乏長屋のような巣窟に放り込まれ、化学変化が起きる。雑事と珍事に巻き込まれながらも、うっかり商店街の救世主に。

 その戸惑いを高橋一生がシニカルかつ滑稽に魅せる。随所でコメディー筋肉を発揮、めちゃくちゃ面白いんだよ。人を内心小馬鹿にして毒づいたりあきれたり、不意打ちに飛び退いたり、想定外の出来事に後退(あとずさ)ったりちゅうちょしたりで大忙し。これがまた丁度いい低温で失笑を誘う。

 たぶん商店街の面々が高温多湿でベタだからだろう。もうさ、おかしいのよ、柳沢慎吾や岸本加世子が。昭和のホームコメディーを担ってきたレジェンド級俳優がいい意味でやり過ぎる感じが。小日向文世も今回はどうしようもないダメオヤジ役だが、さりげなく面白く仕上がっていて爆笑したわ。

 英人の幼なじみの更紗(中村アン)が微妙に単細胞で暴力的な感じなのも、昭和の漫画風味でね。商店街のみなさんがベタだからこそ、根尾の英知と本来の狡知さが生かされる構図。対比の妙。

 転生前の根尾はビジネスで巨万の富と成功を手に入れたものの、非道な手腕と傲慢さで人は離れていった。側近だった友野(鈴鹿央士)、英人の妹で敏腕秘書だった英梨(横田真悠)だけでなく、有能な役員(阿部亮平・関幸治)も去っていった。根尾の孤独の描写は真に迫る。基本は孤食、会話はAIと。そりゃあ人の心を失うわな。

 根尾のスポンサーで投資家の東郷(市村正親)は味方に見えて、実は老獪。根尾の宿敵・大手企業の社長である一萬田(坪倉由幸)ともじっこんの様子。生き馬の目を抜くビジネスの世界は魔物だらけ。業界でも嫌われ者だった根尾は、誰に狙われてもおかしくない。突き落とした犯人はいまだ謎である。

 根尾は本心とは裏腹に善行を重ねるうちに、今まで感じたことのない人の温かみや手作り総菜のおいしさ、幸福感を味わう。苦手なべったら漬けやワンカップ酒をうまいと感じるようになり、高級赤ワインが口に合わなくなる。英人として生き直すことで、孤独も傲慢も薄れていく。ところが歴史はちょっとずつ変わっていく。根尾が二人存在する世界で、転生の副作用はどんな形で現れるのかな。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年5月28日号掲載

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