7点差でも安心できない…中日の悪夢で思い出すプロ野球“悲惨すぎるサヨナラ負け”

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珍サヨナラ劇

うのない、不運なサヨナラ負けに泣いている。

 序盤からノーガードの打ち合いとなった乱打戦は、11対11の8回、ダイエーが秋山幸二のソロで1点を勝ち越し、12対11で最終回を迎えた。

 だが、9回裏、近鉄も最後の粘りを見せる。ダイエーの守護神・岡本克道に対し、先頭の代打・山本和範が中前安打。1死後、中村紀洋の右越え二塁打で二、三塁とチャンスを広げた。これに対し、ダイエーは岡本から斉藤貢にスイッチし、代打・大石大二郎を敬遠して満塁策を取ったが、水口栄二に右前タイムリーを許し、同点に追いつかれてしまう。

 なおも1死満塁。大村直之はカウント3-1から強い当たりの投ゴロを放つ。併殺で延長戦突入かと思われた。ところが、ここで思いもよらぬハプニングが起きる。大村の打球を処理した斉藤は、すぐに本塁へ送球しようとしたが、ボールがグラブに挟まり、取り出すことができない。

 この間に三塁走者・礒部公一がサヨナラのホームを踏み、無情のゲームセット。“投ゴロ”でサヨナラ勝ちという珍事に、佐々木恭介監督も「3-1から“1球待て”のサインでも良かったが、押せ押せのあの場面で“待て”はないよ」と笑いが止まらなかった。

 一方、心ならずも珍サヨナラ劇を演出する羽目になった斉藤は、「(ボールが)挟まって取れなかった。悔しい。情けない」と天を仰ぐばかりだった。

勝ったと思った瞬間ほど、野球は牙をむく

 0対9から追いつく猛追を見せながら、「骨折り損のくたびれ儲け」とも言うべきサヨナラ負けを喫したのが、2000年のオリックスだ。

 5月27日のダイエー戦。先発・ブロウズがニエベスに一発を浴びるなど大乱調で、2回9失点KO。序盤で試合は決まったかに思われた。

 だが、オリックスも負けていない。3回に6長短打と3四球で7点を返すと、5回に田口壮の中前タイムリーで1点差。7回にも藤井康雄が右越えソロを放ち、同点に追いついた。

 ところが、9対9の最終回に悪夢のような幕切れが待っていた。8回途中からリリーフした5番手・杉本友が、先頭の秋山幸二に死球を与えたのが負の連鎖の始まりだった。次打者・小久保裕紀の併殺コースの三ゴロを、セカンド・大島公一が一塁へ悪送球。小久保の二進を許してしまう。

 杉本は味方の拙守にもくじけず、坊西浩嗣を左飛に打ち取って2死までこぎつける。さらに井口忠仁(資仁)も空振り三振に打ち取った。ところが、「さあ、これで延長戦」と思われた直後、ワンバウンドしたボールを捕手・三輪隆が後逸し、振り逃げを許してしまう。

 そして2死一、三塁から、柴原洋の左前安打で無念のサヨナラ負け。仰木彬監督は「9点差をひっくり返したら罰が当たる」と吐き捨てたが、負け惜しみにしか聞こえなかった。

 一方、2つの敵失に救われて勝利を拾ったダイエー・王貞治監督も「2回まで9点を取って負けたんじゃどうしようもない。説明がつかん。“疲れた”の一言だよ」とげんなりした様子だった。

 野球は、たった一つの四球、送球、捕球ミスで流れが一変する。大量リードも、土壇場の同点劇も、最後のアウトを取るまでは何の保証にもならない。

 7点差を守れなかった中日の敗戦も、球史の中で見れば決して前代未聞ではない。だが、勝利を目前にしながら、最後の最後で一気に崩れていく怖さは、過去のどのサヨナラ負けにも共通している。

 勝ったと思った瞬間ほど、野球は牙をむく。悲惨なサヨナラ負けの歴史は、その残酷さを何度も証明してきた。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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