タイで“セレブ妻”の仲間入りと思ったら…「クルマも住まいも見劣りして惨めな思い」 日本人コミュで孤立した駐妻の現実

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SNSに書き込まれた、事実無根の内容

 前川さんの相談者の中にも、身に覚えのない悪意に晒された女性がいるという。

「ある時、SNS上にその方の家族に関する、悪意ある書き込みがされたそうです。のちに発覚した“投稿者”は同じ駐在生活を送る駐妻仲間。その投稿者自身、言葉の通じない孤独や生活環境の格差に深く苦しんでいたといいます。誰にも言えない不満や羨望が積み重なった結果、矛先が周囲に向いてしまったのだと思います。逃げ場のない狭い社会では、一度生まれた負の感情が、匿名をいいことに、尖った言葉となって放たれてしまうことがあります」(前川さん)

 では、もし自分の中に誰かを妬む気持ちが芽生えてしまったら、あるいは、誰かの妬みの対象になってしまったら、どうすればいいのか。前川さんは、こうアドバイスする。

「まずは自分の中に妬む気持ちがあると気付くことが、大きな一歩。実際、妬む人には自分自身の気持ちに気付けていない場合も多いです。もし、誰かを妬む気持ちに気づいたら、そんな自分を責めたり批判したりするのではなく、心身の疲れや『もっと大切にされたい』という自分の心のSOSだと捉えてセルフケアにつなげてください。自分に小さなご褒美をあげたり、家族と大変さを共有して労い合ったりする時間を意識的に持つことが大切です」

妬み、妬まれる負の連鎖から自由になるには

 妬まれる側なってしまった方へは次のように言葉を送る。

「『自分に落ち度があったのでは』と自責的になる必要はありません。『こんなことをしないとやっていられないくらい、この人も大変なのかもしれない』と相手の言動の裏にある“痛み”を想像してみてください。すると、問題から一歩距離がおけて自分を保ちやすくなります。

 その上で、相手と心理的にも物理的にも距離を置き、安心できる人との繋がりを大切にすること。相手がさらに攻撃してくるようなら、直接対応するより第三者に間に入ってもらい、毅然とした対応をすることをお勧めします」

 仕事することも許されず、交友関係が極端に狭くなりやすい海外生活では、夫の肩書きや生活レベルが自身のアイデンティティのすべてであるかのように錯覚しがちになる。逃げ場のない小さな世界で、少しでも自分を優位に保とうと必死になるあまり、もともと持っていたはずの広い視点や心の余裕を見失ってしまうことも。そんな不自由な暮らしの中で、自分自身の価値が見えなくなり、他人の物差しで自分を測っていたのかもしれない。まずはその心の痛みに気付くことが、自分自身を取り戻すきっかけになる。

前川由未子さん
金城学院大学経営学部 准教授。臨床心理士、公認心理師。産業組織領域を専門に、これまで5,000人以上の支援に携わる。2025年、海外居住者のメンタルヘルスケアを提供する(株)Taznaを設立。

取材・文/荒木睦美

デイリー新潮編集部

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