最後と決めたシーズンに何が起きるのか…西武・栗山巧と“完全燃焼した男たち”の記憶
引退を決めた選手のラストシーズンには、独特の緊張感がある。
西武一筋25年目のベテラン、栗山巧が今季限りでの現役引退を表明し、最後のシーズンに臨んでいる。今季は主に代打で出場し、初打席となった4月18日の日本ハム戦では、プロ通算2151本目となる中前安打を記録した。通常、引退発表はシーズン終盤以降に行われることが多い。だが過去にも、今季の栗山のように早い段階で引退を明かし、残りのシーズンを完全燃焼した男たちがいる。【久保田龍雄/ライター】
オレの夢が叶った。自分の仕事は終わり
真っ先に思い出されるのが、日本ハム選手時代の新庄剛志だ。2006年4月18日のオリックス戦、新庄(当時の登録名はSHINJO)は2回に左越え2号ソロ、7回にもバックスクリーン右に3号満塁弾を放ち、チームの勝利に貢献した。
そして試合後のヒーローインタビューで、ビックリ仰天の引退宣言が飛び出す。
2回に放った本塁打を「28年間思う存分野球を楽しんだぞ。今年でユニホームを脱ぎます打法」と命名した新庄は、涙を拭いながらお立ち台に上がると、「えー、今日ヒーローインタビューという最高の舞台で報告したいことがあります。タイガースで11年、アメリカで3年、日本ハムで3年……。今シーズン限りでユニホームを脱ぐことを決めました」と突然引退を宣言した。
日本ハム本社の藤井良清社長は「何も聞いていない……」と絶句し、スタンドのファンからも「辞めないで!」と悲鳴のような絶叫が飛び交った。
引退を決意したのは、本拠地・札幌ドームで行われた3月25日の開幕戦、楽天戦だった。球場が満員の4万3000人のファンで埋め尽くされる光景を見て、「オレの夢が叶った。自分の仕事は終わり」と思ったという。4月上旬には、専属の荒井修光広報に引退を伝えていた。
理由はそれだけではなかった。
「みんなにはわからないと思う。自分にしかわからない。刺せると思ったスローイングで刺せなかったり、プレーに納得がいかなくなったので」
年齢的な衰えも痛感していた。「ボロボロになるまでやりたくない」という美学を持ち、「やり残したことはない」と語った新庄にとって、まだ花も実もあるうちに身を引くのは、ある意味で当然の選択だった。
そして、「今まで以上に楽しみたい。もうひと花咲かせたいな。頂点に立てたら、死んじゃうかも」と残りシーズンに全力を尽くすことを誓った。その現役最後の夢は、最高の形で実を結ぶ。
引退発表の時点で首位・西武に5ゲーム差の4位だった日本ハムは、6月下旬に11連勝するなど上昇気流に乗る。1位でレギュラーシーズンを終えると、プレーオフ、日本シリーズを勝ち抜き、前身の東映時代以来44年ぶりの日本一を達成した。
「本当に漫画みたいなストーリーで出来過ぎ」
無上の感激に浸った新庄は、「北海道で種をまき、毎日一生懸命水を与え、やっと3年目で花を咲かせられた。花の色はとても美しくて、たくましい金色の花」と語り、さわやかな笑顔で17年間の現役生活に別れを告げた。
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