最後と決めたシーズンに何が起きるのか…西武・栗山巧と“完全燃焼した男たち”の記憶

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野球の神様からの贈り物

 冒頭で紹介した栗山と同じく、シーズン開幕前に引退を口にしたのが、ロッテ・福浦和也だ。

 2018年9月22日の西武戦で史上52人目の通算2000安打を達成した福浦は、翌19年、球団から2軍打撃コーチ兼任を要請される。すると、「コーチと選手という両天秤の中で自分のことばかりやっているわけにはいかない。両方に同じように集中することはできない。だったら、コーチを主にしたいと思いました」(週刊ベースボール2019年10月24日号増刊『ありがとう福浦和也 引退惜別号』)と決意。1月24日に同年限りでの引退を発表した。

 2軍で若手の指導に情熱を燃やす一方、「千葉で2軍の試合をやるときには、1打席でも試合に出て、ファンへ恩返しをしたい」と16試合に出場。15打数4安打4打点を記録した。9月23日の日本ハム戦が引退試合となり、1軍に昇格する。2軍がAクラス争いをしている時期だったため、福浦は「出なくてもいい」と伝えていた。だが、「スタメンで出てほしい」という井口資仁監督の格別の配慮に心を揺さぶられ、7番DHで最後の雄姿を見せた。

 打撃は4打数無安打に終わった。それでも、最終回にDHを解除して一塁の守備に就くと、2死一塁から平沼翔太のライナーを果敢にダイビングキャッチ。まるで野球の神様からの贈り物のようなウイニングボールを手にし、有終の美を飾った。

みんな、ありがとう

 シーズン終盤ながら、ポストシーズンまで約2ヵ月を残した時期に引退を発表したのが、広島選手時代の新井貴浩だ。

 チームがV3に向けて独走状態に入った2018年9月5日、「若手が力をつけているカープの今後を考え、今年が良いのではないかと考えた」と涙ながらに同年限りでの引退を発表した。

「最後は日本一になってみんなで喜び合って終われれば最高だと思っています。最後の最後まで全力疾走で駆け抜けたい」

 そう闘志を新たにした新井は、その後、主に代打の切り札として試合に出場。日本シリーズのソフトバンク戦でも4度打席に立った。

 結果的に日本一の夢こそかなわなかった。それでも、「本当に『みんな、ありがとう』という気持ちが強いです。打てなかったけど、感謝したいです。たくさん声援をもらって」と最後まで応援してくれたファンに心から感謝しながらユニホームを脱いだ。

 早い段階で引退を表明することは、残された一試合、一打席の意味を変える。ファンも、チームメートも、そして本人も、終わりを意識しながらシーズンを見つめることになるからだ。

 栗山にとっても、現在の西武が首位争いを繰り広げているだけに、現役25年間の総決算を栄冠で飾りたい思いは強いはずだ。夢は実現するのか。筋書きのないドラマがどんな結末を迎えるのか、最後まで見守りたい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘! 激突! 東都大学野球』(ビジネス社)

デイリー新潮編集部

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