赤字87億円、社員の退社ラッシュ、制作費削減…「悪ふざけ」「内輪ノリ」「業界感」フジテレビが直面する課題とは

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

上場以来初

 フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスが発表した2026年3月期連結決算は、営業損益が87億円の赤字となった。中居正広氏をめぐる問題によって広告主が離れ、地上波広告収入が大きく落ち込んだことで、上場以来初の営業赤字という厳しい結果になった。【ラリー遠田/お笑い評論家】

 ***

 だが、この赤字を単に「中居問題の後遺症」と考えるだけでは、フジテレビが直面している問題の本質を見誤ることになる。今回の低迷は、1つの不祥事による一時的な業績悪化であるばかりではなく、フジテレビというテレビ局が長年抱えてきた体質と、現在の社会意識とのズレが一気に表面化した結果なのだ。

 一昔前のフジテレビは日本のテレビ界で最も華やかで、最も勢いのある局だった。「楽しくなければテレビじゃない」というスローガンのもとで、1980年代から90年代にかけて、同局はテレビを権威や教養の場から、都市的な遊びの場へと変えていった。

「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも!」「とんねるずのみなさんのおかげです」「めちゃ×2イケてるッ!」などの人気番組に象徴されるように、フジテレビの強みは、芸能人、スタッフ、視聴者を巻き込む一体感にあった。内輪ノリ、悪ふざけ、業界感、華やかな人間関係。それらは若者を中心とした多くの視聴者に熱狂的に支持され、世の中のトレンドを作る存在だった。

 しかし、時代が移り変わるにつれて、その「フジテレビらしさ」の負の側面があらわになってきた。芸能人とテレビ局員の距離の近さ、制作現場の濃密な人間関係、女性アナウンサーを含む局員のタレント化、業界内部の暗黙の力学。かつては「華やかなテレビ業界の空気」として受け取られていたものが、現在では透明性の欠如、権力関係の不均衡、ハラスメントの温床として見られるようになった。

 中居正広氏をめぐる問題が深刻に受け止められたのは、それが有名タレントのスキャンダルだったからではない。フジテレビという会社の内部に、そのような事態を生み、見過ごし、十分に是正できなかった構造があるのではないか、という疑念を視聴者と広告主に抱かせたからだ。

 もちろん、フジテレビも何もしていないわけではない。むしろ、最近の同局はかなりはっきりとした危機感を持って、清水賢治社長のもとで新しい試みに踏み出している。

次ページ:変化のきざしあり

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。