【春ドラマ視聴率ベスト10】堤真一「GIFT」が首位も4.8%の低空飛行…「日曜劇場」ブランドの試練

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「日曜劇場」はつらいよ

 4月に始まった春ドラマが第5、6回まで進んだ。大半が全10回だから、折り返し地点を過ぎた。どの作品がよく観られているのか。プライム帯(午後7~同11時)の民放16作品の個人視聴率を調べ、ベスト10を割り出した。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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「春ドラマは不発」と見る向きがあるようだが、それは実情と異なる。春ドラマ16本の個人視聴率の合計値は過去と比べて遜色がない。どの季節のドラマも1週間あたりの個人視聴率の合算値は450ポイント前後から470ポイント前後なのだ。

 ベスト10の尺度は個人視聴率に絞りたい。世帯視聴率は5年前の2020年4月からNHKを含むテレビ全局で使われていないからだ。参考にすることもない。業務報告書や株主報告書からも消えている。

 世帯視聴率が主役の座から下りたのは致命的な欠点がいくつもあるから。一番困った点はその番組を観ていた人の数すら分からないこと。大家族世帯も単独世帯も等しくカウントしてしまうためだ。それどころか、テレビのスイッチが入っていたら、誰も観ていなくてもカウントしてしまう。

 だから世帯視聴率の場合、11%より10%のほうが多くの人が観ているケースもあり得る。これでは正確な視聴実態を掴みようがない。個人視聴率は関東地区の1%なら約40万人に相当する。

 米国は1990年代前半に個人視聴率になった。日本でもスポンサー団体が90年代半ばから個人視聴率への切り替えを強く望んでいた。以下、ベスト10だ(4月第1週開始の同6日から5月第2週終了の同17日まで、ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

(1)TBS「日曜劇場 GIFT」(日曜午後9時)第6回まで。4.8%
(2)テレビ朝日「未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3」(木曜午後9時)第5回まで。4.7%
(3)テレビ朝日「ボーダレス~広域移動捜査隊」(水曜午後9時)第5回まで。4.2%
(4)TBS「時すでにおスシ!?」(火曜午後10時)第6回まで。3.2%

 トップの「GIFT」は車椅子ラグビーのチームと、そのアドバイザーを買って出た宇宙物理学者・伍鉄文人(堤真一)の物語。チームは弱い上にまとまりがなかった。当初はその立て直しを描くだけの話とも思われていたが、違った。傷ついた個人、壊れた家族の再生を描くことが作品の核心だった。

 主力選手の宮下涼(山田裕貴)と若手選手の朝谷圭二郎(本田響矢)はともに交通事故で下半身の自由を失い、人生を迷走していた。だが圭二郎は車椅子ラグビーによって、強気で前向きが売り物の自分を取り戻す。この競技によって、生きる糧を見つけたからだ。事故の加害者・霧山英夫(山中聡)も許す。

 涼はまだ本来の自分に戻れていない。自分が下半身不随になったことにより、一家が散り散りになってしまったからだ。しかし、伍鉄や圭二郎、チームを手伝う雑誌記者・霧山人香(有村架純)との出会いにより、再生しつつある。

 人香の父親は圭二郎の事故の加害者・英夫。涼はその和解劇を目の当たりにして成長する。恨みや憎悪からは何も生まれないと知る。自分の家族の再結成に結び付く気づきだった。

 伍鉄の再生も始まった。他人への配慮がほとんどないキャラクターがあらたまりつつある。また、かつての恋人・坂本広江(山口智子)との間に生まれた息子・昊(玉森裕太)との間の新しい関係も築きつつある。

 折り返し地点で個人視聴率トップ。それでも批判が目立つのは、「民放の大河ドラマ」と呼ばれるほど高い期待度と注目度がある「日曜劇場」ならではだろう。

 2位の「未解決の女 警視庁文書捜査官3」は特に中高年に人気のある作品。主人公は文字と文章を読み解くことにかけては天才的な刑事・鳴海理沙(鈴木京香)である。

 理沙は警視庁内で「魔女」とも呼ばれる。人間嫌いで、黒ずくめの洋服に身を包み、ややエキセントリックな性格だからだ。不意に「文字の神様が降りてきた!」と口走ることもある。鈴木は普段とは全く異なる役柄を楽しんでいるように映る。

 高視聴率は納得だ。脚本も演技も映像もクオリティが高い。しかし、この種の刑事作品は軽んじられてしまい、社会派作品ばかりが讃えられる風潮がドラマ界の一部にはある。ドラマ賞を得るのも社会派作品が大半。これは正しいのだろうか。

「ボーダレス」は事件に合わせて走り回る特殊トラックが舞台。それに乗り込む7人の刑事を描く。主人公は巡査部長の刑事・仲沢桃子(土屋太鳳)と巡査の刑事・黄沢蕾(佐藤勝利)。ともに正義感の塊だ。

 もっとも、この2人の上司で課長(警部)の赤瀬則文(井ノ原快彦)の存在感が回を追うに連れて増している。赤瀬は過去を背負っているらしい。出世には背を向けている。チョビ髭を生やし、やさぐれている。井ノ原の演技が良い。優等生役より似合うのではないか。

 制作は東映。捜査を描くより、刑事たちの人情を表すことに重点を置いている。第5回では世間から叩かれ、借金取りから追われる犯罪加害者家族の母子のために奔走した。同じテレ朝の「未解決の女」との棲み分けを図っている。この作品も中高年に人気が高い。

 4位の「時すでにおスシ!?」は同業のドラマ制作者の評判がすこぶる良い。まず、視聴者を引き寄せるために刺激的なエピソードを挿入するようなあざとさがないからだ。

 主人公で50歳のスーパー店員・待山みなと(永作博美)の日常を淡々と描く。それでも見応えある作品に仕上げている。奇をてらう物語を極端に嫌った脚本家・山田太一さんとの共通性を指摘する意見を複数聞いた。

 みなとは夫の航(後藤淳平)を14年前に事故で亡くした。その後は1人息子・渚(中沢元紀)の子育てに懸命で、淋しさを感じるどころではなかった。だが、渚が就職して家を出ると、自分には母親であることしか生きがいがなかったことに気づく。「自分の人生、迷子になっていました」(みなと、第1話)

 みなとは同時期に「鮨アカデミー」に入校する。最初は気乗りしなかったが、不器用にしか生きられない一本気な性格の講師・大江戸海弥(松山ケンイチ)や個性派の同級生5人との出会いにより、人生が再び輝き始める。

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