「ルパン三世」の作曲家「大野雄二さん」が明かした“創作の舞台裏” 「左手にTVリモコン、右手にストップウォッチ」【追悼】
アニメ「ルパン三世」と聞けば、あのテーマ曲が自然と浮かぶ方も多いことだろう。「ルパン三世のテーマ」をはじめ、数々の映画やドラマ、アニメに作曲家・編曲家として携わってきた大野雄二さんの訃報が届けられた。享年84。
生前、大野氏は音楽ライター・神舘和典氏のインタビューに答え、キャリアの転換点から「ルパン三世のテーマ」誕生秘話まで、包み隠さず語っていた。あのスタイリッシュな音楽の数々はどのようにして生まれたのか。以下、神舘氏による追悼記事である。
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ピアニストから作曲家に軸足を移した理由
作曲家でジャズ・ピアニストの大野雄二さんが、5月4日に息を引き取った。13日に所属事務所から発表された。死因は老衰。静かな、安らかな最期だったという。
コンサートパンフレット用のインタビューやテレビの音楽番組で、大野さんにはいく度かお目にかかっている。音楽シーンのレジェンドで重厚なたたずまいの人物なので最初はドキドキした。ところが、インタビューがスタートするととても饒舌に語ってくれる、そのギャップも魅力だった。
大野さんといえば、なんといってもアニメ「ルパン三世」のテーマ曲の作曲者としてお馴染みだが、キャリアのスタートは1960年代、ジャズ・ピアニストとして。20代のころは、渡辺貞夫や日野皓正らとしのぎを削っていた。しかし1970年代に入り、突然活動の軸足を作曲に移した。
「当時、チック・コリアやマッコイ・タイナーをはじめアメリカのジャズ・ピアニストが次々と来日してね。僕は彼らの前座を務めた。ある夜、やはりピアニストのジョー・ザビヌルにステージに手招きされて共演した。そのときに僕たちとの違いに気づいたんだ。彼らの音にはジャズの歴史がにじんでいた。進化の過程を演奏から感じた。日本人の僕の音には進化の“プロセス”がない。あれで、きっぱりケジメがついて、作曲の道へ進むことにしたんです」
ジャズシーンから離れて作曲家として再スタートを切った時期の代表曲は「気になる嫁さん」「雑居時代」「水もれ甲介」など。ユニオン映画が制作して石立鉄男が出演したドラマの音楽を手掛けた。
そんな大野さんのメロディの魅力は口ずさめること。一度聴くと、頭のなかで何度もリフレインして鳴り続ける。そこには理由があった。大野さんはピアニストでありながら、鍵盤で作曲するのではなく、自宅で歌いながらひたすら歩き回るそうだ。
「部屋の中でうろうろうろうろしているよ。それでメロディが生まれたら、すぐに譜面にする。その音楽は1日寝かせる。あえて放置するんだ。ひと晩眠るとメロディを客観視できるから、翌朝細かく修正して音楽の精度を上げていく。鼻歌で作っているからこそ、完成した曲も歌える。メロディが歌えることは音楽にとってとても大切だからね」
「犬神家の一族」「人間の証明」「野生の証明」
1970年代後半になると、大野さんは角川映画で立て続けに印象的な曲を書いた。「犬神家の一族」(1976年)、「人間の証明」(1977年)、「野生の証明」(1978年)だ。
横溝正史の推理小説が原作の怪奇系映画「犬神家の一族」の「愛のバラード」はおどろおどろしくもきらびやか。ニーノ・ロータのようなイタリアのテイストも感じられる。クラシック、邦楽、イタリアンをクロスオーバーした大野さんならではのサウンドだ。
森村誠一が原作のサスペンス映画「人間の証明」の「人間の証明のテーマ」は詩人、西條八十の詩賦『帽子』をベースにした歌詞に大野さんがメロディをつけ、ジョー山中がブルージーな声で歌い大ヒットした。
やはり森村誠一原作の映画「野性の証明」のテーマ「戦士の休息」も町田義人の歌唱でヒットさせた。劇中の「お父さん、怖いよ。なにか来るよ」という台詞を流行させた薬師丸ひろ子も後にカバーした。大野さんは作曲だけでなく編曲も担当しているが、間奏のロック・ギターがシャープで実にいい。
これらはどれも、だれもがメロディを口ずさめるエバーグリーンとして今も聞き継がれている。
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