「ルパン三世」の作曲家「大野雄二さん」が明かした“創作の舞台裏” 「左手にTVリモコン、右手にストップウォッチ」【追悼】

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大人子どもの区別なくカッコイイ音楽を

 こうした成功を踏まえて、大野さんはいよいよアニメ「ルパン三世」の音楽を手掛けた。テレビの第2シリーズ以後、ルパンはすべて大野さんが音楽を担当している。ルパンのテーマはジャズでロックでラテンでソウル。さまざまな音楽をクロスオーバーした。なかでも宮崎駿の劇場映画初監督作品「ルパン三世 カリオストロの城」(シリーズ劇場版第2作)はアニメの名作としてファンに長く愛されている。

「アメリカでは、スヌーピーにしても、ディズニーにしても、ジャズやロックが使われていたでしょ。うらやましかった。大人子どもの区別なくカッコイイと感じられる音楽をアニメでやりたかった」

 ルパンも最初はジャズのテイストで曲を書いていたそうだ。

「僕は本来ジャズのピアニスト。でも、ジャズのままではマニアック過ぎるから、ちょっと黒っぽい味付けをした。アース・ウインド&ファイアーやスティーヴィー・ワンダーみたいな。すると、ほどよくポップに仕上がった」

 シリーズが進んでもテーマ曲のメロディは一貫している。しかし、作品によって、シーンによって、アレンジを変え、リズムを変えて大野さんが再生させる。普遍性のあるメロディだけど、音楽の装いにはその時代を反映させていた。

「ルパン三世」でお気に入りのキャラは

「ルパンの音楽づくりはね、左手にテレビのリモコン、右手にストップウォッチを持って、細かく時間を計って譜面にしていくんだ」

 大野さんは打ち明けた。

「ルパン三世 カリオストロの城」は2021年にシネマコンサート形式でも上映。スクリーンで展開する画面や台詞はオリジナル作のままだった。しかし音楽はすべて、大野さんの率いるバンドが生で演奏する音楽と映画のコラボレーション。大野さんは、BGMはもちろん細かい擬音もすべて譜面に起こした。

「ルパンがジャンプするときのビューンという音も譜面にしたよ」

 そう言って笑った。

「ビューンという音符はないから、譜面に文字で“ビューン”と書いて拍数を記した」

 大野さんは自宅にこもって、リモコンとストップウォッチを握りしめ、まるで受験勉強のように1日15時間、3カ月休まずにコツコツと作業を続けた。職人気質なのだ。

 そんな大野雄二さんに、「ルパン三世」の登場人物の中で誰がお気に入りなのかを質問したことがある。峰不二子、と言ってくれたら愉快だなと期待したけれど、きっぱりと、主人公のルパンを選んだ。

「やっぱり、ルパンが一番魅力的だね。ふざけた言動をしているけれど、実はいつも真剣に考えている。その個性を声優の山田康雄さんが見事に表現してくれていた」

 この5月に予定していた大野さんのコンサート(5月30日、ビルボードライブ東京)は予定通り開催される。大野雄二バンドが、「ルパン三世」や「犬神家の一族」の音楽で華やかにリーダーを弔うことになるという。

 ご冥福をお祈りいたします。

神舘和典
1962(昭和37)年東京都生まれ。雑誌および書籍編集者を経てライター。政治・経済からスポーツ、文学まで幅広いジャンルを取材し、経営者やアーティストを中心に数多くのインタビューを手がける。中でも音楽に強く、著書に『不道徳ロック講座』など。

デイリー新潮編集部

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