「ロマンス詐欺」被害の3割は“マッチングアプリがきっかけ”…やっと出会えた理想のパートナーが「詐欺師」という悲劇の実態

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「やっと出会えた」相手は詐欺師

 SNSやマッチングアプリを通じた詐欺被害は、2025年に過去最悪を記録した。警察庁が「SNS型投資・ロマンス詐欺」と分類するなかで、3分の1にあたる被害がマチアプでの出会いに端を発している。(註1)

 ヤリモクといわれるナンパやパパ活を目的としたユーザーが、目を引くプロフィール画像やキラキラした経歴を掲載してふんだんに「いいね!」をゲットしているなか、普通のユーザーは思い通りの相手とはなかなかマッチしない。

 評価経済の中に埋もれていく自分を「必要とされていない」「拒絶されている」と受け止めてしまい、自尊心が傷ついて自己肯定感が失われていく。
 
 そんな時に、高嶺の花と眺めているだけだったイケメンや美女が、丁寧な言葉と誠実な雰囲気で挨拶してくる。やり取りは間を置かずに続き、興味のあることや好きなものについて盛り上がる。

 これまで、挨拶のメッセージを送っても無視され、アプリ上でのやり取りが始まってもフェイドアウトされ、意気消沈していた普通の人たちからすれば願ってもないことである。

 やっと出会えた。この楽しい時間が永遠に続けばいいのに。

 その気持ちを逆手に取られ、詐欺の泥沼へとハマっていく。好意をほのめかされるが、はっきりとした言葉は口にしない。

被害額は増加する一方

 何かと理由をつけて金の無心をしてくる。疑いを持つと心底悲しそうな顔をされ、感情を揺さぶられる言葉をメッセージで投げられる。

 マチアプの黎明期、アプリの実態を紹介する取材で、すでにこの手の話を聞いたことがあった。交際や結婚を前提にして、二人のためだからと交通費や宿泊費、髪のセット代、借金返済などを口実に寸借詐欺の標的にされてしまうのだ。

 当時は「クヒオ大佐」の劣化版ではないかと思い(註2)、使い古された手口に引っかかることに驚いた。だが、近年のロマンス詐欺は投資話を絡めて莫大な金額をせしめたり、滞納している借金や税金、家賃の支払いと偽って何度も金を巻き上げたりと、使い古しにもかかわらず被害額、手口のバラエティはむしろ増加傾向にある。

 その手本として利用されているのが、「頂き女子りりちゃん」が残した「みんなを稼がせるマニュアル」だという。

 なぜ「りりちゃん」のマニュアルを詐欺師はフル活用するのか。第3回【ロマンス詐欺の“教典”として再び脚光…マチアプで獲物を探す詐欺師が「頂き女子りりちゃん」のマニュアルを絶賛する理由】では、反社会的な“悪の教典”であるマニュアルが、非常に高い完成度だという事実を詳細に報じている──。

註1:令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)/警察庁

註2:「アメリカ軍に所属する戦闘機パイロットのクヒオ大佐」と称した結婚詐欺師が1970年代から90年代にかけ複数の被害者から金銭を騙し取り、世間の注目を集めた事件。被害総額は1億円に達したという報道もある。

井上トシユキ(いのうえ・としゆき)
1964年、京都市生まれ。同志社大学文学部卒業後、会社員を経て、98年からジャーナリスト、ライター。IT、ネット、投資、科学技術、芸能など幅広い分野で各種メディアへの寄稿、出演多数。

デイリー新潮編集部

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