TBS「ONE CHANCE」が画期的だった理由 漫才王者9人が「今一番面白い」無冠の芸人を推薦
9組がネタとトーク
5月2日にTBSで放送された「ONE CHANCE 2026~王者推薦 漫才No.1決定戦~」は、近年のお笑い賞レース系の番組の中でも、かなり特殊なタイプの番組だった。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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番組の基本構造は、M-1王者などの漫才王者9人が、それぞれ「今一番面白い」と考える無冠の漫才師を推薦する。そして、選ばれた9組がネタとトークで競うというものだった。
MCは笑福亭鶴瓶、千鳥のノブ、中条あやみ。推薦された芸人は、イチゴ、女と男、スタミナパン、大王、タルタル関数、チェリー大作戦、デルマパンゲ、ひつじねいり、丸亀じゃんごの9組である。
この番組が面白かったのは、単に「まだ売れていない芸人を発掘する番組」だったからではない。若手発掘番組はこれまでも数多くあった。この番組では、テレビ局や審査員や視聴者が出場者を選ぶのではなく、すでに結果を出している有名な芸人たちが、まだ世間に十分知られていない芸人を推薦するというところが画期的だった。
今のお笑い界では「M-1グランプリ」を頂点とする賞レースの権威が極端に高まっている。「M-1」で決勝に行くことや優勝することで得られるのは、単に世間に面白いと認知されることだけではない。それによって知名度が上がり、注目され、メディア出演などの仕事が一気に増える。芸人としてのステージを上げるためにこの上ない重要な機会となっているのだ。
かつての芸人たちは、テレビのネタ番組や深夜番組など、複数の経路を通って世に出ていた。しかし現在では、有名になるためのルートが賞レースという巨大な関門に集中しすぎている。
その結果、賞レースというシステムに適応できる一部の優秀な芸人は浮上しやすくなる一方で、面白いが賞レース向きではない芸人、決勝に届くまでに時間を要するような芸人が、なかなかチャンスをつかみづらくなっている。
「ONE CHANCE」は、その偏りを別の回路で補正しようとした番組である。しかも、その推薦者が王者であることが重要だった。今回、推薦人となったメンバーは単なる有名な芸人ではない。賞レースという制度の中で一度は勝ち切った者であり、その制度の価値を最もよく知っている。
その王者が「この人たちはまだ無冠だが面白い」と言う。これは、テレビ局が「次に来る若手」として売り出すのとは意味が違う。勝った者が、まだ勝っていない者の価値を保証する。そこには、お笑い界内部の信用がテレビの表舞台に持ち込まれる面白さがある。
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