樹木希林、原田美枝子、宮沢りえ…名女優たちが“母”を演じた名作5選【母の日の映画案内】

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 5月の第2日曜日は母の日。起源には諸説あるが、日本では1930年代から普及したとされる。以後、父の日とあわせて長く廃れる気配もない理由は、両親への感謝を表すことの重要性を多くが認めているからだろう。映画の世界でも、両親の愛情を軸とした物語は多い。母の愛を描いた日本映画の名作5選を、映画解説者の稲森浩介氏が解説する。

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母を慕う子の思い

〇「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(2007年)

 原作のリリー・フランキーの自伝的小説は200万部を超え、社会現象になるほど話題になった。

 自由に生きるオトン(小林薫)はめったに家にいない人だ。オカン(樹木希林)は、1人でボク(オダギリジョー)を筑豊の炭鉱町で育てる。

 東京の大学に進学したボク。卒業後自堕落な生活をしていたが、一念発起して仕事を始めた。そして、がんになったオカンと東京で一緒に暮らし始めるのだ。ボクの友人たちに料理を振る舞うオカンは、皆に慕われていた。

 7年後、オカンのがんが再発する。欲しいものはと聞くと、ボクの卒業証書という。その卒業証書の額を丁寧に磨く母。このあたりで、涙腺がゆるむ人もいるだろう。

 東京タワーが間近に見える病院に入院したオカン。抗がん剤治療の壮絶な苦しみが始まった。しかしオカンは一言も止めたいとは言わない。肉親で同じような経験をした人には、とても辛い場面だ。

 ボクの方が耐えられなくなり、抗がん剤治療を止めてもらう。そして、短い穏やかな日々を過ごしたオカンは、ボクとオトンに見守られながら静かに旅立つ。

 公開当時、母親を強く慕う姿が話題になった。この作品を観て、大人になっても母親を慕う気持ちを、素直に表現してもいいのだと考えた人も多い。

 オダギリ自身も「物心ついて家族は母だけだったので、役者という自分の人生を利用する職業において、母と息子を演じるのは1つの節目」(「キネマ旬報」2007年4月上旬号)と語っている。

 母を慕う子どもの、普遍的な思いを描いた作品だ。

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