樹木希林、原田美枝子、宮沢りえ…名女優たちが“母”を演じた名作5選【母の日の映画案内】
認知症になった母の言葉
〇「百花」(2022年)
母が認知症になり、過去を忘れてしまったら。そしてその母との間に、子どもの時のことでわだかまりがあったとしたら。
泉(菅田将暉)は会社の同僚・香織(長澤まさみ)と結婚していて、まもなく子どもが生まれる。母・百合子(原田美枝子)はピアノ教師をしているが、ある日、認知症と診断された。
百合子の認知症による意識の混乱を映像で見せる。しだいに症状が進んだ母は、スーパーで何度も同じ場所を歩き、何度も同じものを買う。やがて万引きで捕まってしまう。
そんな母を懸命に支える泉だったが、ずっと母にわだかまりを持っていた。母は小学生の泉を1人置いて、男と失踪したのだ。母にどうしてあの時自分を見捨てたのかと聞いても、認知症の母からは返事がない。
この作品を観ていて、もう一つの作品を思い出した。「わが母の記」(2012年)だ。作家の洪作(役所広司)は、認知症になった母(樹木希林)を妹一家から引き取る。洪作は幼い時に兄妹の中で1人だけ8年間も祖母に預けられ、寂しい少年期を過ごした。なぜなのか。ずっとその疑問を心の底にしまっていた。
わが子を1人にした理由はそれぞれ違うが、認知症になってしまった母に、なぜそうしたかを聞きたい。そんなもどかしさは同じだ。
両作とも息子たちは、記憶のかけらからこぼれ落ちたような母の言葉を聞き、忘れていたあることを思い出す。そして母の深い愛を初めて知ることになる。
余命宣告をされた母がした事
〇「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)
余命宣告された母は、子どものために何をしようとするのだろうか。
夫・一浩(オダギリジョー)が家出し、経営する銭湯を休業中の妻・双葉(宮沢りえ)はパン屋で働いていた。突然倒れて病院に行くと、がんの末期であることを告げられる。余命2カ月だった。
銭湯の浴槽でひとしきり泣いた後、まず夫を連れ戻し、銭湯を再開することを決意する。
中学生の娘・安澄(杉咲花)は、学校でいじめにあっていた。ある日、体育の授業中に制服を隠されてジャージ姿で帰り、もう学校に行きたくないと泣く。しかし、双葉はそれを許さない。「逃げちゃだめ、自分で解決しなくては」と。
この場合、親は教師に相談するのが一般的だろう。しかし、双葉には時間がない。自分がいなくなった後に同じことが起きるかもしれない。
安澄は教室で意外な方法で制服を取り戻す。制服を着て帰ってきた娘を、双葉はきつく抱きしめた。もう一つ、娘にどうしても会わせたい人がいた。そのために、病状が進んだ身体を奮い立たせ旅に出る。
双葉は最後に一つだけ、自分のためにある事を実行する。しかし思うようにいかず、感情を爆発させるのだ。人生の最後だからといって、すべてが解決するとは限らない。
驚きの結末が話題になった作品だが、最大の見どころに、双葉と安澄が最後に病室で対面する場面をあげたい。宮沢は一言のセリフもない中、崇高とも言える姿を見せ感動的だ。
自分が同じ立場になったら、どうするだろうか。誰もがそんなことを考える作品だろう。
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