話題作「ママと神さまとシルヴィ・バルタン」にご本人が出演…「レナウン・ワンサカ娘」「アイドルを探せ」日本でも人気を誇った歌姫の現在
「若き日のシルヴィ」が登場!?
さて、肝心の映画である。先に試写で鑑賞した、シルヴィ世代だという映画ジャーナリスト氏に解説してもらった。
「邦題『ママと神さまとシルヴィ・バルタン』は、原題『Ma mere, Dieu et Sylvie Vartan』の直訳です。原作は、弁護士で人気ラジオ・パーソナリティ、ロラン・ペレーズ(1963~)が2021年に刊行した同名の自伝小説。つまりほぼ実話の映画化です。フランスで昨年3月に公開されると、150万人動員の大ヒットとなり、公開2週目には興行成績第1位となっています」
舞台となるのは、パリに住むモロッコ系の一家。
「1960年代の話です。6人きょうだいの末っ子、ロランは、生まれつき内反足で、自力で歩くことができません。手術もうまくいかず、医師は歩行補助具の着用を勧めます。しかし強気でパワフルなママは、『そんなものを付けたら、一生、自力で歩けない。必ずわたしが治してみせる』と、いじめを恐れて学校へも行かせず、民間療法や神頼みなど、懸命に治療の道を探ります。前半は、このママの猪突猛進の溺愛ぶりが見どころです」
ママを演じたレイラ・ベクティは、アルジェリア系フランス人。撮影時40歳前後だったが、若いころから老年までを、特殊メイクもつかいながら、見事に演じきった。
「最終的に、ママの愛で困難を乗り終えたロランは歩けるようになり、感動のラストがやってくる……タイトルからして、たぶんシルヴィ・バルタンから励ましのメッセージか何かが届き……と、誰もが思いますよね。残念ながら、そんな単純な映画ではないのです。そこが、本作の最大の魅力です」
治療が進捗せず、家のなかに閉じこもりっきりのロランは、あるとき、シルヴィ・バルタンを知り、大ファンになる。
「レコードを聴きまくり、TVは欠かさず観て、雑誌や新聞記事もすべて集め、まさにシルヴィが生きがいのようになります。遅れていた読み書きはシルヴィの曲の歌詞で学びます。自分もすきっ歯になりたくて、前歯の間をマジックで塗ってニセのすき間をつくったりします。おかげで、ロランはくじけることなく、さまざまな治療にも耐え、見事に歩けるようになるのです。それが、上映時間102分のうち、はやくも40分あたりです」
なんと、誰もが感動のラストだと思っていたシーンが、あっという間にやってくるのだ。シルヴィのメッセージも、来ない。
「ここで観客は、どうもこのあと1時間、別のドラマがあるようだと気づきます。歩けるようになっても、ママの溺愛はおさまらず、物語(実話)は意外な展開をたどります。学生になり、“シルヴィおたく”として知られるようになったロランのもとへ、音楽雑誌が、シルヴィへのインタビューを依頼しにくるのです。ついに夢がかなう……ロランは緊張しながら、シルヴィに会います。大スターに許された時間は、たった10分間」
このシーンは、誰もが驚くだろう。「30代後半ころのシルヴィ」がスクリーンに登場するのだ。
「わたしもシルヴィ世代ですから、このシーンには息を呑みました。貫禄も十分で、彼女はプルーストの文学論を語ります。資料によると、顔立ちの似た女優さんにメイクをほどこし、あとでCG修正をくわえて、若き日のシルヴィを再現したのだそうです。それにしても、あまりにリアルなので、呆然となりました」
このあと、ロランの人生はどうなるのか、ママの溺愛はおさまるのか……ここからあとは、スクリーンでご確認いただきたい。そして……。
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