「アーティストにとって武器であり、とても大切なもの」 孤高のロッカー「佐野元春」が“生まれて初めて買ったシングル”から教わったこと

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「佐野さんの曲は小説っぽい」

 そんな佐野に「人生を変えた一曲」というテーマでインタビューしたのは、コロナ禍真っ只中の2021年だった。

 レコード会社経由でお願いしたのだが、まさか実現するとは思っていなかったので、OKしてくれたと聞いて正直、慌てた。とても一人で太刀打ちできる人ではないと思い、音楽通の同僚に助けてもらい、リモートでの短い時間だったが、2人で総力取材となった。

 佐野がまず影響を受けたのは両親で、とくに母親だったという。舞台俳優で後に東京・青山でジャズ喫茶を開いたというから、佐野の生い立ちがなんとなくわかる。その、気になる子供時代は――、

〈当時はまだ珍しいことだったのですが、家にはレコードプレーヤーがあり、両親は海外のポピュラーソングを聴きながら一緒にダンスをしていました。6歳くらいの時にぼくがよく好きでかけていたのがザ・ロネッツの「Be My Baby」です〉

 そして、生まれた初めて買ったシングルは「モンキーズのテーマ」(A面)だが、魅かれたのはB面に入っていた「I Wanna Be Free」。

〈つまり両親の影響で無意識に聴いていたのが「Be My Baby」、ステキだなと最初に体験した曲が「I Wanna Be Free」ということ〉

 佐野が音楽活動の中で影響を受けた人をランダムにあげるなら大瀧、ビートルズ(なかでもジョン・レノン)、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、シュープリームス、音楽プロデューサーではフィル・スペクター…。

 そのスタイルについては後輩のBONNIE PINKが「佐野さんの曲は小説っぽいというか、情景が浮かぶ歌詞が多い」と『別冊カドカワ』(10年12月発売)で語っている。

 佐野が目指しているのはアーバン・ロックだが、その存在を「ボブ・ディランと同じ」と語った人もいる。本人もアイドルはボブ・ディランといっているほどで、つまり詩人のようなロッカーか。それが一番わかりやすい。

アーティストの武器

 そんな佐野が影響を受けた言葉として「free」をあげ、こう語った。これが佐野には重要なメッセージだったのではないか。

〈成長するにつれて“free”という言葉が人間にとっていかに大事な概念か徐々に知るようになりました。今でいえば表現の自由。これはアーティストにとってとても大切なものです。アーティストはそれを武器にしているし、検閲にかかったりすると生きづらくなる。そんな最初のキッカケを作ってくれたのがモンキーズの「I Wanna Be Free」です〉

 そしてこんな風に締め括った。

〈人生の大事なことはすべてポピュラーソングの歌詞の中にある〉

 やっぱりカッコいい。

 ちなみに、大変失礼かもしれないので、ご容赦いただきたいが、佐野元春の曲を流しっぱなしにしていたら、飼っている猫がもっとも反応したのが「アンジェリーナ」だった。興奮していた。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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