日本最大の市「横浜」が進める巨大再開発でも… “スラム化”の足音が聞こえる

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既存のビルの空室率が高まるだけ

 横浜市は現在377万人の人口が、50年後には約2割減って301万人になると推計している。だが、国や自治体の人口推計は往々にして甘い。

 国立社会保障・人口問題研究所は2023年の時点で、2025年の出生数を74万9000人と見込み、66万人台になるのは2041年だとしていた。ところが、現実には2025年の出生数が66万人台になりそうだ。つまり、少子化は国の推計より16年も早く進んでいる。横浜市の人口が50年後に、まだ300万人台にとどまっているというのは、おめでたいほど甘い見通しだ。

 人口が増え、経済が発展しているならまだいい。人口の減少局面でこのように大規模な再開発を行い、大型のビルをいくつも建てるとどうなるか。たとえば、横浜市の新市庁舎に隣接するみなとみらい地区では、オフィスの新規供給が増え、既存のビルでの空室率が高まるという問題が生じている。その状況に拍車がかかるだけである。

 オフィスでもマンションでもそうだが、交通至便の一等地にあらたな空室が供給されると、築年数が経過したビルや立地がよくない物件の空室率が増える。人口減社会においては、その度合いは強まらざるをえない。

 オフィスや住宅だけではない。商業や飲食のエリアも同様だ。「BASEGATE横浜関内」とはJRの線路をはさんで反対側の関外(港側の中心街を関内、その外側を関外という)には、伝統的な繁華街イセザキ・モールがあるが、空洞化を心配する声は多い。

賑わっても周囲はスラム化する

 本来、先行きの人口減少が確実な状況下では、第一歩として街を巨大化しないこと、できれば縮小することが必須である。再開発する場合も、規模は小さいながら、従前よりも魅力的な街をつくることが求められる。拡大するかぎり、その街が魅力的でも、いや、魅力的なほど、周囲から人が集まってしまう。すると、人が足りないのだから、周囲がどんどん空洞化する。

 横浜市の空き家率は2023年現在で8.7%(約17万戸)と、全国平均の13.8%より低い。前回調査からは減少したものの、なお約17万戸の空き家を抱えている。大型の再開発は、空き家やシャッター商店街が増えるというかたちで、周辺に波及する。むろん、空き家が増えた地域はスラム化が進む。

 各地域がそうならないように目くばりすることこそ、住民の安心、安全な暮らしを支えるためにある地方自治体の役割だろう。ところが、固定資産税や住民税の増収という短期的な利益に目がくらみ、大規模で派手な再開発に熱心で、それによる不利益には目を配らないとは、あまりにも情けない。いい加減、拡大という発想を捨てないと、地域が壊れ、日本が壊れる。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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