「やり残したことを考えた」教職を捨てシナリオ執筆、部屋に布団1枚で役者稼業…先人たちが実証する“60歳から”できること

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ライブハウスで受けた衝撃

 長野の73歳のシンガーソングライター・丸山俊治さんも週1回のライブハウスの出演を楽しみにしている。

「60歳で定年になりました。音楽は若いころにクラシックギターをかじったぐらい。曲を作るキッカケは、2006年に行ったライブハウスでのことでした。30、40代の人が聴いたこともない歌をみんなで歌っていました。聞けば、自分で曲を作っているという。私もやってみたいと思いました。

 すぐに人から譲り受けたギターを片手に色々なフレーズを弾いて作曲しました。詞は日常生活の細々としたことです。2011年には『70歳になったのだ』という曲を作りました。私が住む市では70歳になると100円でバスに乗れる。年寄りも満更ではないなと思いまして、物忘れや身の回りの些細なことを面白おかしく曲にちりばめました」

 現在まで約50曲を作曲した。そのうちの11曲を選んでレコーディング。CD1000枚を制作して県内のCDショップで発売中だという。

弁護士からミステリー作家に

 一方、60歳まで弁護士を続け、その後、ミステリー作家になった女性もいる。東京の深木章子さん(65)である。

「父が裁判官で私も同じ職に就くつもりでした。ところが、東大の同期生で同じオーケストラ部にいた今の夫と知り合い、彼がサラリーマンになったので、転勤の伴う裁判官は厳しいなと思い弁護士になりました」

 現役時代は主に民事を扱ったという。

「本格ミステリー作家ということで、刑事事件が多かったと思われますが、たまに国選で刑事を引き受けることもあるくらいで、金銭貸借や離婚、相続、そんな仕事がほとんどです」

 ミステリーを書くきっかけは体調の悪化だった。

「実は私は40代にリウマチが発症し、次第に病気が悪化したのです。仕事を続けることが難しくなり、60歳になる年の3月に事務所を閉じました。2、3カ月ぶらぶらしているうち、ちょっと書いてみようかなと思いました。私のやりたいのは本格ミステリー。これはトリックの面白さですね。9カ月ぐらいかけて第一作を書き上げ、新人賞に応募しましたがダメでした」

 その後、いくつかの文学賞に応募するものの落選が続くが、4作目「鬼畜の家」で賞を獲得した。

「『ばらのまち福山 ミステリー文学新人賞』は大好きな本格ミステリー作家の島田荘司さんが1人で選考委員をなさっていますが、この賞を頂いたのです」

 同作で作家デビュー。これまでに3冊の本格ミステリー作品を発表している。

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 人生初のものすごい達成感で涙がポロポロこぼれました――。第1回【「肌ツヤツヤ」「試合は血が躍る」70歳でエベレスト、80歳のボディービルダー…“60歳”以降に挑戦した人たちの充実人生】では、登山やボディービル、マラソンなどに挑戦をした人々が登場している。

デイリー新潮編集部

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