80周年を迎えた長寿番組「NHKのど自慢」秘話 鐘を鳴らす奏者は「審査と無関係」なのに…不合格を出すと“お尻や背中をつねられる”ことも
予選の歌唱時間は40秒!
2014年、中部地方のある公立中学校の50代の女性教諭が、「のど自慢」に出場したことがニュースになった。当日の日曜日に、授業参観(日曜参観)があったのだが、女性教諭が「のど自慢」を優先して出場。授業参観は欠席という運びになったのである。女性教諭は、「どうしてものど自慢に出たい」と、半月前にはこの日の有給休暇を申請しており、校長は「(のど自慢への)強い想いを伝えられた」と休暇取得を了承。ちなみに校長は、「前日に行われる予選で、落選するだろうと。そうなれば日曜に顔は出せるし」と思っていたという。
公務より「のど自慢」を重視したという出来事だが、注目は保護者サイドから一切の文句が出なかったこと。それどころか擁護の声が多数上がった。当時の新聞から紐解こう。
〈のど自慢を辞退されるのは保護者として申し訳なさ過ぎる。貴重な体験談を子どもにしてもらう方がずっといい〉(朝日新聞名古屋版。2014年5月25日朝刊)
確かに「のど自慢」は国民的人気番組ではあるが、その出場への門は非常に狭い。そちらの内実も見ていこう。
まず、開催地だが、毎週日曜の昼放送で、年約50回放送があるため、大体一都一道二府43県を1年かけて回ることとなる。番組では各地の名所や名産も紹介され、非常に経済波及効果が高い。加えて、例えば、応募は往復葉書でおこなわれるため、開催が決まった土地は、その郵便局だけでも大いに潤うこととなる。そして予選に備え、カラオケBOX&スナックは満員に。よって、「我が町にのど自慢を!」というNHKへの陳情は後を絶たないが、あくまで決めるのはNHKであり、前述のように、1年のバランスをとって開催地は決められる。
ただ、市制施行何周年とか、「新たな体育館が出来ました」というメモリアルな契機があると、開催地に選ばれやすいのは事実のようだ。実際、1998年、初めて海外(ブラジル)で収録がおこなわれた際は、日本からのブラジル移住90周年を記念したものだった。
本番が日曜のため、予選はおおむね土曜の午後から行われる。何千人という応募の中から書類選考で選ばれた約200~250組ほどがチャレンジ。歌う時間は約40秒間だが、歌唱の順番は曲名の50音順のため、同じ曲が立て続けに何回も歌われることがあるという。衣装に凝る参加者も多く、千昌夫の「北国の春」がヒットした1977年は、歌唱時の本人を真似、古ぼけたコートにトランクを下げ、更には額にホクロまで付けた参加者が何十人もいたという。審査は夕方までかかり、発表される合格者は20名。翌日の本選に臨むわけだが、その際、NHK側から通達される取り決めがある。
それは、「今と同じ恰好で、当日も出ること」。本番だからと言って、急に華美な恰好や髪型をされては困るのである(もちろん予選から派手な出で立ちをするのはOK。ただし、NHKなので、ブランドや企業ロゴが目立つ衣装は禁止)。
「皆さんは、今の見た目も含めて選ばれたのだということを忘れないで下さい」とは、選出後にNHKスタッフが言う決まり文句だが、いざ、当日になると、女性のメイクは得てして気合満点に変化しているそうである……。
【後編は「『美空ひばり』『北島三郎』は不合格で『テツandトモ』は合格! 『のど自慢』参加者同士が結婚して司会アナが仲人に…『生まれた子どもの名付け親になったことも』」】





