八十八夜を前に「ほうじ茶が消える」…購入制限の茶舗が続々 “世界に見つかった”だけじゃない切実な事情

国内 社会

  • ブックマーク

抹茶もほうじ茶も原料は同じ

 われわれが言うところの「日本茶」は、その多くが同じチャノキ(茶の木)というツバキの仲間の植物から作られる。育て方や収穫時期、使う部位、加工の仕方によって、抹茶・玉露・煎茶・番茶(ほうじ茶、玄米茶など)といった種類のお茶になるのだ。

 拡大するお茶需要の一方で、日本の茶園面積は2000年代の約5万ヘクタールから現在は3万ヘクタール台前半まで減少しており、生産基盤の縮小が続いている。

 茶畑が20年で約3割減――。その中でいったい何が起きているのだろうか。

「作り手側からすると、同じ原料を使用するなら、単価の高いものの生産を優先するのは当然。この数年の圧倒的な“抹茶”ブームで抹茶の生産量が増え、価格が高騰した結果、ほうじ茶に回す原料まで高くなってしまっているのです」

 国内小売りベースで、抹茶とほうじ茶の価格の違いを見ると、抹茶は用途によっては「1グラムあたり数十円から100円」を超える一方、ほうじ茶は「数円程度」にとどまり、その価格差は数倍から十数倍に開く。実際、取材した齋藤氏が店主を務める「楽山」で販売される「もっとも高価な商品」は、20グラムで2万円を超える抹茶だった。

 同じ“お茶の木”から取れる葉でも、より「高く売れる抹茶」の優先順位が高くなるため、どうしても「安価なほうじ茶」が確保しにくくなるのだ。

庶民のお茶は「課題満載」

 近年、お茶農家には、高齢化と後継者不足による生産量の減少や、猛暑や干ばつなど気候変動による品質の不安定化などの課題が重くのしかかっている。

 さらに製茶業界には、「ガスや電気代の高騰による焙煎コストの上昇」「ナフサ高騰によるパッケージコストの増加」といった問題も……。

 ほうじ茶は元来、番茶や茎茶といった比較的安価な原料を、強火で焙じて作られる“お安いお茶”だ。そのためコスト増の影響を受けやすく、供給が絞られやすい。結果として「安いものから消える」という現象が起きてしまっている。

「家計にやさしい庶民のお茶」であるほうじ茶は、このままなくなってしまうのだろうか……。前出の「楽山」では、毎月「5のつく日」と土曜日に店頭で自家焙煎した、できたてのほうじ茶を長年販売している。

「今は確保が少し大変ですが、うちがほうじ茶を扱わなくなることはないですよ。やっぱりほうじ茶は日常のお茶ですから……」

 八十八夜を迎えるこの季節、湯気とともに立ちのぼる香ばしい香りが、これまでのように気軽に楽しめなくなりつつあるのはつらい所だが、ほろ苦い現実ごと、しっかりと受け止めて味わいたい。

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。