完成近づくサグラダ・ファミリア ガウディを「奇抜な天才」とだけ呼べない理由がわかる展覧会
何本もの鎖が編み出す放物線
ガウディの代表的な建築理論の一つとして「ポリフニキュラー(逆さ吊り構造理論)」がある。そもそも建築とは重力に抗いながら形を立ち上げてゆく営みで、最大の敵は「重力」。この重力をどう扱うか。
ガウディは敵を味方に変える天才である。ガウディは1本の鎖を2か所に引っ掛けて天井から垂らした。すると美しい放物線が生まれる。これは重力が描く自然の形である。ならば、この放物線を180度回転させたら? 重力が描いた放物線、このラインこそが、自らの重みを自らの形で支える最適の構造となっている! と見たのがガウディなのだった。それがガウディ亡き後もまだまだ建築中のサグラダ・ファミリアの形にも生きている。
この展覧会では、この鎖を取ったり繋げたりの実験を、来場者がその場で体験できるし、デジタル上でも操作できる。これらの何本もの鎖が編み出す放物線をAIが読み取り、設計し、あっという間に建築物のスケッチを大画面で見せてくれる。これはなかなか楽しい。
「私のクライアントは急いでいません」
2026年はガウディ没後100年の年になる。東京展会期中の2月20日にはサグラダ・ファミリアの最高塔「イエス・キリストの塔」に十字架が据えられ、「完成」に向けて大きく前進した。その高さは172.5m。世界で一番高い教会の塔となった。
生き物のように形を変え続けてきたサグラダ・ファミリアに「完成」という言葉が並ぶとどこかヒヤッと心が寂しくなる。もはや「未完成」そのものが作品の一部になっているので、完成してしまうと何かが欠けたように感じるのだ。幸い全体の完成は2030年以降ということだが、残された時間は後わずかで愛おしい。
そもそもの始まりのサグラダ・ファミリアの建設は信心深い一般庶民の発想から始まり、長い間一般庶民のわずかな寄付金から成り立っていた。しかもガウディはその建設費に見合った小さな教会を設計するのではなく、壮大な完成像を描いていた。完成の目処を問われるとガウディはこう答えていたという。
「私のクライアントは急いでいません」
サグラダ・ファミリアは教会なので、ここでのクライアントとはつまり神のこと。つまりガウディは初めから自分が生きているうちに完成することを期待していなかったし、長い時間をかけていろんな人が関わり作り上げてゆく時間そのものを大切にしていたことがうかがえる。
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