20年ぶり続編「プラダを着た悪魔」はなぜ愛される? 強烈すぎる“パワハラ”描写でも「ローマの休日」に並ぶ名作になったワケ

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あの名作にも並ぶ…!

 普通の大ヒットコメディ映画だったら、これで「懐かしの傑作」入りして終わる。が、『プラダ~』が素晴らしかったのは、ホームエンターテインメントになってからだ。北米で同年12月にリリースされたソフトのセールスは約9,845万ドル。これだけでも特大ヒットといえるが、当時はNetflixがDVD郵送レンタル業者だった、レンタル市場最後の全盛期である。その市場での回転数はセルソフト以上だったと思われる。

 日本でも2007年にDVDがリリースされ、当時のレンタル市場で大人気を博したばかりか、今もなお廉価版DVDが都度ジャケットを変えて発売されるほどである。

 女性主人公、コメディ、実在するハイブランドが多用された衣装などなど、キャッチーな要素がふんだんに盛り込まれていることから、ジェンダーを問わずメディアの映画特集などで必ずタイトルが上がるようになり、やがて色褪せない名作の仲間入りを果たした。女性ターゲットで時代を超えて愛されている洋画は『ローマの休日』と本作くらいではないだろうか。

 その理由は時代を切り取った作品でありながら、時を経ても古臭さを感じさせないことだといえる。

リアルな業界の考察

『プラダ~』のモデルとなったのは、米Vogue誌編集部とその名物編集長だったアナ・ウィンター氏とされている。今もVogue誌は形を変えながらファッションメディアの権威であり続けているし、アナ・ウィンター氏は米版編集長を退いたものの、より高いポジションであるコンデナスト社CCO兼Vogue誌グローバル編集長に君臨している。

 また、欠かせないキャラクターである“セレブリティ”や“ファッショニスタ”といった当時のファッションリーダーたちは、インフルエンサーに形を変えて健在。ファッション業界と世間一般に対して影響力を与える者は、姿形を変えても根本は変わっていない。

 さらに、ファッション市場のあり方を学べるエピソードを取り入れたのも『プラダ~』が初めての試みだったといえる。今回の続編プロモーションでも相当数オマージュされた、かの有名な「セルリアンのセーター」のシーンがそれだ。パリをはじめとするファッション・ウィークで披露される「誰も着ないドレス」(劇中セリフママ)が、ゆくゆくはファストファッションの市場にコピーされ巨大なファッション市場を動かしていることを、たった数分のセリフの応酬で語っているのだ。

 ファッション業界の仕組み自体は今もなお変わっていないが、前作が公開された20年前よりもスピード感をもって情報は拡散され、一流ブランドのコレクションからインスパイアされたお手頃価格の商品を一般人の我々が手にするタイミングは早まっている。

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