新入社員の“スピード退職”に悩む企業に共通する「2つの問題点」 専門家が指摘する「初任給を上げた企業」の“予想外のリスク”

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第二新卒市場の影響

《第二新卒。新卒で入社し、二、三年以内に辞めて別の職を探す若手を指すこの言葉は、昨年あたりから急速に一般化し始めた。せっかく入社しても、企画、宣伝など希望するセクションへの配属が通らなければ、会社を飛び出してしまう学生が増えているからだ》

 今、話題を集めている「入社当日に辞める若手社員」と類似した傾向は、既に1990年代に浮上していたことが分かる。

「かつての転職市場は『社会人転職』しか存在しなかったため、『新入社員の早期退職は不利になる』との指摘にも一定の説得力がありました。入社して1年未満に会社を辞め、2回目の就活に挑むと採用担当者から『あなたは社会人として、どんなスキルを持っていますか?』と質問されます。当然ながら社会人として経験はゼロに等しいですから答えられません。ところが2010年代以降は、多くの企業が新卒と中途採用だけでは人材が足りないという事態に直面します。そのため企業は第二新卒にも目を向け、選考のノウハウを構築していきました。結果、入社して1年未満の“元新入社員”が入社試験に応募してきた場合でも、『ある企業がこの人物を評価して内定を与えた事実は大きい。とにかく面接で会ってみよう』と判断する企業が増えてきたのです」(同・石渡氏)

内定を得ると転職の案内

 こうなると、就職・転職サービスを提供する人材系企業にも変化が生じる。高度経済成長を背景に1960年代の中・高卒者は「金の卵」として企業が高く評価した。ところが転職市場において現代の「金の卵」は内定を得た大学生だという。

「少子化などを原因として、新卒の就職支援サービスは利益が出にくい状況が続いています。実際、会社説明会をオンライン限定にするなど、サービスの内容を縮小する動きは顕著なのです。しかし、それでもサービスを辞めないのは、応募してきた大学生の情報、もっと言えば内定を得た学生の情報が貴重だからです。つまり大学生が支援サービスに『内定をもらいました』と報告した瞬間、転職の案内がメールなどで送られてくる時代になっているのです。これが新入社員の超早期退職に影響を与えているのは間違いないでしょう」(同・石渡氏)

 石渡氏は新入社員の早期退職が社会現象となっている背景として、「新入社員側の原因が3割、企業側の原因や時代の流れが7割」と指摘する。

「確かに一部の新入社員がタイパやコスパを重視し過ぎていることも無視できません。“雑巾がけ”という言葉がある通り、企業は時間をかけて新入社員を育てようとしますが、それを嫌がる新入社員も少なくないのです」(同・石渡氏)

「新入社員は敵」という企業も

「就職先が『有名企業』、『給与が高い』、『福利厚生が充実している』といった条件を満たしていると、早期退職は減ります。一方、『有名ではない』、『給与が安い』、『福利厚生に魅力がない』企業であり、なおかつ新入社員に雑巾がけを求めてしまうと、早期退職が増えるというわけです」(同・石嶺氏)

 企業側の問題として、石渡氏は2点を指摘する。第1点は「入社前に会社のいいところしか紹介しない」企業。第2点は「無理をして初任給を上げた」企業だ。

「『どうせ辞めるなら、むしろ早く辞めてほしい』と考えを切り替えた企業もあります。そうした企業は入社前の内定者に『わが社の良い点と悪い点』をしっかりと情報開示しています。一方、必要以上に内定辞退・早期退職を恐れる企業は『良い点』しか伝えません。これでは『ダマされた』と新入社員が思っても仕方ないでしょう。さらに今では初任給を上げられる余裕がないにもかかわらず、管理職のボーナスを減額したり、中堅社員の給与を抑えたりするなど、無理を重ねて上げる企業が出てきました。新卒の獲得競争が激化しているとはいえ、さすがにこれは問題があります。何しろ社員にとって新入社員は文字通りの“敵”であり、怨嗟の視線や声が一気に集中するからです。かなり手ひどくいじめられるケースも私は把握しており、これでは入社1年未満に会社を辞めても不思議ではないと同情してしまいます」(同・石渡氏)

 第1回【むしろなぜ入社したのか…「入社4時間で退職」する新入社員に“氷河期世代”は驚愕も…専門家が「いまの若者がスピード退職しても再就職への悪影響はほぼない」と断じる理由】では、改めて超早期退職の現状を紹介し、就職・転職支援サービスを提供する企業が「超早期退職は再就職で不利になる」、少なからぬ企業が「応募者が退職支援業者に依頼した事実を確認すれば、評価を下げる」と考えていることなど、超早期退職のデメリットについて詳細に報じている──。

デイリー新潮編集部

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