イラン戦争で一層深まる「米国の孤立」 覚悟のトランプ氏が「巨額の国防費」要求で米国債が“金融危機の震源地”となる日

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イラン戦争は「気晴らし」?

 トランプ氏にとって頭痛の種はイランとの戦争だ。

 4月10~12日に実施された調査企業イプソスの世論調査によれば、イラン戦争はそれに伴うコストと見合う「価値がある」との回答は24%、「価値はない」は51%に上った。

 トランプ氏は前述のラスベガスの演説で、イラン戦争を語る際に「ちょっとした気晴らし(little diversion)」という表現を使った。発言の意図は定かではないが、有権者の神経を逆なでしただけで、「百害あって一利なし」だ。

 イラン戦争は米国経済にも大きなインパクトをもたらしている。

 ロイターは15日、米国の原油の純輸入量が先週、2001年の統計開始以来の水準(日量約7万バレル)にまで減少し、第2次世界大戦以来、初めて純輸出国(輸出量が輸入量を上回る国)に転じる可能性が高まったと報じた。

 イラン戦争のおかげで米国産原油の輸出が急増する一方、米国の原油輸入量は大幅に減少しているからだ。原油生産量が世界第1位の米国は、輸出でもサウジアラビアやロシアと肩を並べる存在になりつつあるのだ。

孤立覚悟で軍事経済へ

 エネルギーの自立に自信を深めているからだろうか、トランプ政権の国際協調を軽視する傾向が一層進んでいる感がある。

 20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が16日に米ワシントンで開かれたが、議長のベッセント財務長官が会議の途中で退席し、共同声明はおろか、議長総括も取りまとめようとしなかった。

 驚くのは、ベッセント氏が向かったのはトランプ氏の遊説先(ラスベガス)だったことだ。G20よりも国内の支持固めの方が大事だとするトランプ政権の姿勢が鮮明になった形だ。

 孤立を覚悟したトランプ政権は、軍事経済に重きを置き始めているようだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは16日、国防総省の高官が米自動車大手GMやフォードなど複数の企業の経営陣と兵器や軍事装備品の生産について協議したと報じた。米国の軍事物資が逼迫する状況を踏まえ、ヘグセス国防長官は生産体制を戦時並みに引き上げる方針を示しており、今回の協議はその一環だとみられている。

 トランプ氏は4月初め、来年度(今年10月から来年9月末)の政府予算の要望をまとめた予算教書で、前年度比4割増の1兆5000億ドル(約240兆円)の国防費を連邦議会に要求した。実現すれば、第2次世界大戦以降で最大の軍事支出となる。

米国債が金融危機の震源地に?

 だが、米国財政は火の車だ。連邦最高裁判所の判決により、急増した関税収入は「水の泡」と化し、米国債の大量発行が避けられない情勢にある。

 トランプ政権の動きにウォール街は懸念を深めている。

 ポールソン元財務長官は17日、31兆ドル(約4900兆円)規模の米国債市場が機能不全に陥れば、約20年前に財務長官として対応した金融危機とは異なる事態になると警告を発した。

 当時は米国政府に信用危機に対処するだけの財政余力があったが、財政赤字が急拡大した現在、信認を失いつつある米国債の急落が次の金融危機の震源地となるとのウォール街の危機感をポールソン氏が代弁したのだと思う。

 このように、自らまいた種(イラン戦争)でトランプ政権は一層窮地に追い込まれている。悩める超大国の動向について、今後も高い関心をもって注視すべきだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。2026年3月末日で経産省を退職。

デイリー新潮編集部

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