松ぼっくりで「流れが変わった」…マキロイ連覇の脇で「また2位」のローズ、惜敗でも胸を張って歩き去った“ゴルフ界トップの品格”

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「突然、流れが変わったんだ」

 松ぼっくりを避けてボールだけをクリーンに捉え、しかもグリーン奥からの寄せゆえに柔らかく打ち出したい。そう考えたローズは変則的な打ち方を試みたが、それが、あの奇妙なミスにつながったという。

「パターという選択肢も考えた。でも(ボールとグリーンまでの面の)芝が伸びていて、パターで転がすのは無理だと思った」

 続く13番(パー5)で奪い返すぞと言わんばかりに、ローズは見事に2オンを成功させ、ピン3メートルを捉えた。イーグルチャンス、最悪でもバーディーは獲るだろうと思われた。しかし、結果は3パットしてパー止まりとなった。

 リーダーボードに目をやれば、最上段には、すでにマキロイが浮上していた。それでもローズは諦めることなく必死の戦いを続け、15番(パー5)でバーディーを奪い返した。しかし、17番では寄せワンに失敗し、またしてもボギー。この時点で、マキロイとは3打の差がついており、ローズの勝利の望みは限りなくシュリンクしていった。

 単独首位に立った直後のことを、「突然、流れが変わったんだ。あっという間の変化だった」と、ローズはあらためて振り返った。

 しかし、流れを変えた要因の1つが、松ぼっくりだったことは、傍から見ればどこかコミカルでもある。だからこそ、何にもぶつけようのないローズの悔しさ、もどかしさが想像される。

マスターズがあるからこそ

 昨年も今年も、優勝に手をかけながら惜敗に終わったローズだが、彼は「それでも、やっぱりオーガスタ・ナショナルは、僕が大好きな場所であることに変わりはない」と言い切る。

「マスターズがあるからこそ、僕のキャリアにはエネルギーが溢れる。自分を信じることもできる。フォーカスすべきマスターズがあるからこそ、もっと練習しよう、さらに前進しようと思える」

 これほど深く熱くマスターズとオーガスタ・ナショナルを愛するローズに、勝利の女神がなかなか微笑んではくれないことは不思議でならない。だが、その背景には、きっと何か特別な意味がある。

 72ホール目を終えたローズが、肩を落としたり、下を向いたりせず、胸を張り、高い視線を保って堂々と歩き去った姿には、強さと気高さが溢れていた。

 どれだけ惜敗を重ねても、心から勝者を讃える優しく潔い人格。不平不満を口にせず、胸を張って毅然と振る舞う品格。

 そんなローズの「格」は、ゴルフ界の最高位である。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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