「軍事を知らず、語らず、考えずではいけない」 田岡俊次さんが貫いたジャーナリズム【追悼】

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“元帥”

 湾岸戦争の報道で江畑謙介さんらと共に時の人に。ものまねされるほど人気を博す断定的な口調からか、“元帥”のあだ名もついた。

 妻の則子さんは思い出す。

「帰宅できない日が続きましたが、本人も私たちもこういうものだと思っておりました。現場が好きで、家でも勉強熱心だったと感じます」

 軍事の分野は広い。専門家に的確な質問ができ、情報の正誤を判断できるレベルまで勉強や準備をしなくてはと自戒した。肝心の指揮官の能力や発想はなかなか分からないと正直だった。見立てを誤ることもあったが、常に「現段階での自分の結論」を明確にした。

「はっきりものを言うので、御迷惑をおかけしたのではと思います」(則子さん)

 ソマリア沖の海賊対策に護衛艦を早く出せと主張、防衛費増額にも理解を示す。

「熟考して実際の効果を大切にした。国際法の視点は父譲りです」(秦さん)

 尖閣諸島を念頭に、島の攻防には制空権が決定的な要素で上陸作戦による奪回は二の次だ、予算獲得が目的の非合理な戦略を立てるのはよくない、とも述べた。近年最大の関心事は台湾有事で、中国との対立が深まる状況に懸念を示した。

「軍事を知らず、語らず、考えずではいけない。日頃から軍事を受け止めていれば、危機感というムードであおられる恐れを避けられる、と見ていました」(秦さん)

家族と過ごす時間を

 2男1女を授かっている。

「子供たちに干渉しませんでした。自由に動ける時間の多いツアーで海外に出かけるのが好きで、家族一緒でも行きました。芸術にはあまり興味がなく、町中をひたすら歩いて地元の人の様子に触れるのを楽しんでいました。ヨットも長年の趣味でした」(則子さん)

 昨年末、進行した食道がんが見つかる。3月27日、84歳で逝去。

「本人の希望で手術などはせず、家族と過ごす時間を選びました」(則子さん)

 かつてイランも訪れ、食糧自給率の高さや国民性を現地で知った。米国、イスラエルがイランの核開発を封じようとすれば、長期の爆撃か地上戦での占領が必要で、統治できる公算は低いと14年前に分析している。

週刊新潮 2026年4月16日号掲載

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