太宰府市が「日本遺産」取り消しも…「世界遺産ではなく?」「取り消されてもほぼ影響なし」知名度不足との指摘が絶えない理由
日本遺産の特集をしても「反応は鈍い」
筆者は、これまでに数多くの旅行関係の書籍や雑誌で原稿を執筆してきた縁で、大手旅行会社や旅行ガイドの編集部にも多くの知り合いがいる。著名な旅行ガイドの製作に携わってきたベテランの編集者A氏に、日本遺産の認知度について匿名で話を聞いた。
――日本遺産の認知度について、どう思っていますか。
A:私たちがこう言うと怒られますが、正直、全然知名度がないと思います。私どもがターゲットにしている読者層は、日本の歴史や文化に深い関心を持っている人たちなのですが、そういった層にも浸透していません。なので、女子高生やサラリーマンといった、一般的な旅行者はほとんど知らないと言っていいでしょう。
私どもの雑誌でも、日本遺産の認定が始まったときに記事を作ったことがあるのですが、反響は鈍かった。以後、日本遺産を前面に推し出した特集は、ほぼ作っていませんね。施設の説明の際、軽く触れる程度にとどまっています。
――日本遺産の認知度が低いのは、なぜだと考えますか。
A:まず、ネーミングがいまいちですよね。世界遺産が圧倒的な存在感があるので、その下、みたいなイメージはぬぐえないのではないでしょうか。さらに、認定に際してストーリーを軸にしているというのも、よくありません。ストーリーを大切にするなら、地元に語り部のような人材を積極的に配置すべきだし、案内板にもひと工夫がいると思います。
世界遺産だって、すべての施設が観光客でごった返しているかと言うと、そうではありませんよね。それならば、なおさら日本遺産は厳しいでしょう。観光客が多く訪れているエリアもありますが、それはもともと観光地として魅力があったエリアに限られていて、認定がきっかけで爆発的に知名度が上がった例はほぼないとみていいと思います。
世界遺産、国宝……もっとも認知度が高いのは
――ストーリー重視なら、有名なアニメーターや声優に依頼し、アニメを作ってPRするのも有効だと思います。
A:そういった工夫があるといいですよね。ちなみに、東京都八王子市では日本遺産のPRの一環で「日々は過ぎれど飯うまし」というアニメとコラボを行っています。神奈川県伊勢原市の大山阿夫利神社は、日本遺産の「大山詣り」に縁の深い伝統芸能をPRするため、「大山詣り奇譚録 時をかける納太刀」というアニメを作りました。声優には緒方恵美さんが起用されています。
――日本遺産の認定が取り消された大宰府市は、これからどうなるのでしょう。
A:太宰府市はもともと観光資源が多いエリアですし、日本遺産の認定が取り消されても、ほとんど影響はないとみています。私も行ったことが何度もありますが、地域の人たちは地元の文化に誇りを持っている印象を受けました。
――文化財に関する制度にもいろいろあり、世界遺産、日本遺産、国宝、重要文化財、日本遺産、伝統的建造物群保存地区……など、本当にいろいろあります。旅行の目的になりやすいのはどれでしょうか。
A:何と言っても、世界遺産です。日本国内はもとより、海外にもPRできますからね。みなさんが海外旅行をする際にまず目的地にするのは、世界遺産ですよね。ヴェルサイユ宮殿も、モン・サン=ミシェルも、万里の長城も、自由の女神もすべて世界遺産。海外の方が日本旅行をする際も、姫路城とか、法隆寺のような世界遺産を見に行こうとします。
意外に強いなと思うのは、国宝です。映画「国宝」のヒットで、国宝という単語の知名度も上がり、ポジティブでプラスなイメージがますます高まりましたから。一方で、重要文化財はちょっと知名度で難がありますね。登録文化財というものもありますが、専門家や愛好家はまだしも、旅行者には違いがわかりにくいです。
姫路市のように国宝の城が誇りになっている地域もある一方で、まったく住民が関心を持っていない地域も少なくありません。どんな制度であっても、地域ごとの温度差は大きいです。結局のところ、日本遺産であろうと、世界遺産であろうと、それを活かせるかどうかは地域の人の努力次第だと思います。




