バーガー59円、牛丼280円の時代は終わったが…令和の日高屋に残る「390円ラーメン」の哲学
マクドナルド59円、吉野家280円
2002年6月に「日高屋」1号店となる新宿東口店を開店させる際、神田が最もこだわったのは、「大宮ラーメン館一番街店」が1杯480円(税別)で売っていたラーメンを90円値下げし、1杯390円(税別)に設定したことだ。〈※なお、2004年4月からの消費税の総額表示の義務化に伴い、消費税分をのみこみ税込390円とした〉
当時、ロードサイドに展開する幸楽苑が390円(税別)で販売していたが、神田は新業態「日高屋」を売り出し、ブランドを広めるためには最適な価格だと思った。
その頃は、牛海綿状脳症(BSE)の問題が発生、消費者の「牛肉離れ」が起こり、日本マクドナルドが2002年(平成14年)2月からはハンバーガー1個80円(税別)で売っていた。2002年(平成14年)8月5日からハンバーガー1個59円(税別)で販売した。
また、吉野家は2001年(平成13年)から牛丼1杯並280円(税込)で売っていた。吉野家は米国産牛バラ肉の部位の一部、ショートプレートを食材に使っていたが、2003年(平成15年)米国でBSE問題が起きて、米国産牛肉の輸入が禁止された。吉野家は翌2004年(平成16年)に牛丼の販売を一時的にストップしたのである。
神田は、このようなデフレ経済下で、「ラーメン館」の価格が480円~600円(税別)と高止まりしていたことが、2003年に事業終了となった「ラーメン館」のブランド寿命を早めたと思った。
「安すぎて儲けが出ない」の反論も
新業態「日高屋」を開発する中で、中・長期的にラーメン価格の見直しを行なった。
神田が、取締役会議で、
「ラーメン館のラーメン価格を390円(税別)に値下げする」(神田)
と発言すると、役員は全員反対した。「安すぎて儲けが出ない」というのだ。
「私はこういう重要案件を決めるのに、多数決は採りません。
390円は決定事項です。物件探しで常に現場を歩いているので、駅前の人の流れ、客層、ビジネスマンの財布感覚などをよく理解しているつもりです。お客様が来店しようと思える価格が適正価格なんです。利益のことは後から考えればよいことです。
多数決で価格を決めて、仮にその決定が間違えたとしても誰もが責任を取りません。多数決というのは無責任なところがある決め方だと思います。
私は誰よりも現場の感覚を大切にして、メニューや価格設定を決めてきました。私の決定が的外れであれば、会社は成長しなかったでしょう」(神田)
神田は「ラーメン館」の480円(税別)のラーメンを思い切って390円(税別)に値下げで反転攻勢に打って出た。食品スーパーのように低価格ラーメンを目玉にして、「餃子1皿(6個入り)をつまみに生ビールを1杯飲み、ラーメンで腹を締めて1000円で釣りがくる」というセット販売を売り込んだ。
このような価格設定がうけて、中華そば「日高屋」新宿東口店は大いに繁盛した。「日高屋」が鳴かず飛ばずでヒットしなければ、今日の日高屋の発展はなかったといえるだろう。





