「スマホ」「子持ちシシャモ」「定期入れ」「スッポン」の共通点とは? 豊洲市場では減少傾向も築地場外では増加する“意外な物”

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築地市場の路面状態が影響か

 もちろん、豊洲へと移転する前の築地市場時代にも拾得物は少なくなかった。築地と豊洲で拾得件数に違いはあるのか都に聞くと、「築地の記録がないため正確には分からないが、豊洲は築地よりも3割くらい少ない印象」(同)だという。

 豊洲に移転してなぜ、落とし物が減ったのか――。2倍とまではいかないが、築地に比べて用地が広い豊洲市場。立体構造で人の出入りも多いものの、「築地市場は路面状態が悪かったため、ターレ(小型の運搬車)や小車などから荷物が落下してしまう事象が、豊洲より多く発生していたのではないか」と都の担当者は話す。

 築地市場は荒れた路面が目立ち、ターレがガタガタと音を立てながら走行していたため、弾みで食材や運転する人の持ち物が落下してしまうことが多かったようだ。このほか、市場が豊洲に移転して以降、拾得物が減った理由として、都は「(フロア間の)上下移動で、ターレが直接乗ることができるエレベーター(SEV)も利用でき、落下リスクが減少している」「近年は買出人が仲卸へネットなどで注文して共同配送を利用するなど、取引方法が多様化してきている」ことも挙げている。

 豊洲に移転して落とし物が減っているのに対し、市場が移転した後も継続している築地場外市場(中央区)では、逆に拾得物が増加の一途だという。場外市場とは言っても、築地は公設市場ではなく、多くの小売店が軒を連ねる一般観光客の来訪もOKな“東京の名所”だ。

なぜか杖を忘れる高齢者も

 築地場外市場の総合案内所「ぷらっと築地」のスタッフによると、築地市場が移転してからインバウンドが急増したこともあり、落とし物は増加傾向。年末を中心に、届けられる件数は毎月数十件に上るという。

 インバウンドの忘れ物が貴重品中心なのに対し、日本人の忘れ物はさまざま。水筒や弁当箱、キャリーケース、ベビーカー、入れ歯、マフラー、こけしなどがあり、中には「年末の買い出しでせっかく調達したマグロやカズノコ、カニなど、数万円しそうな高級魚介をごっそり忘れて、そのまま取りに来ないケースもあった」(ぷらっと築地)というからもったいない。

 ちょっと不思議なものでは、帰る際にも必要だと思われる「杖」がある。「築地でおいしいお寿司を食べて元気になったせいか、そのまま杖を持たずに帰ってしまった年配者もいた」(同)といい、ぷらっと築地に杖が何本も保管されることもあるのだとか。

 さらに不思議なのは、家族で築地に寿司を食べに来て、そのまま老人が置き去りにされ、迷子のようにぷらっと築地に預けられたケースも。しばらくして親族と再会できたらしい。

 これからゴールデンウィークを迎え、大賑わいが予想されるため、「築地場外の魅力を十分楽しんでもらうためにも、落とし物や忘れ物には十分注意してほしい」(同)と呼び掛けている。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋)。最新刊に『国産の魚はどこへ消えたか?』(講談社+α新書)がある。

デイリー新潮編集部

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