いかりや長介さんに森永卓郎さん… 数々の著名人の命を奪った「原発不明がん」 発見、治療が難しい理由とは

ドクター新潮 ライフ

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【前後編の後編/前編からの続き】

「希少がん」の一種とされ、数々の著名人の命を奪ったことでも知られる、原発不明がん。この病気で夫・保雄さんを亡くした書評家・東えりか氏が解説する、治療の効果が上がっている事例とは。

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前編では、夫・保雄さんが原発不明がんと診断された際の経緯や、予防のためにできることについて語っていただいた。〉

 現在、がんの研究は日進月歩であり、種類さえ特定できれば治療法の選択肢は多く、寛解する可能性も高くなってきている。患者数の多い五大がんと呼ばれる胃・大腸・肺・肝臓・乳房に発生したがんは、早期発見されれば治療効果は高い。

 また、一説には1000種以上あるといわれるがん種でも前立腺がんや子宮がん、膵臓がんや食道がんなどは耳にしたことがあるだろう。一方で「希少」と呼ばれるがんの一群があることはご存じだろうか。人口10万人に対して患者数6人以下のがんのことで、300種類以上が確認されている。

 希少がん患者数を合計すると、年間約100万人が発症するといわれるがん患者の約5分の1になる。決して他人ごとではない。

 原発不明がんはその希少がんの一種である。体内からがん細胞が発見されても、原発巣が特定できず治療が困難ながん、それが原発不明がんなのだ。

 国立がん研究センターの解説では、原発不明がんと診断される人は成人固形がんの1~5%と決して少なくない。

 原発巣が分からず個々の症状も大きく違うため、希少がんの専門家である腫瘍内科医でも判断は難しく、原発不明がんの治療法は現在も確立されていないのだ。

 だが治療の効果が上がっている例もある。

 評論家でタレントの山田五郎さんは2024年10月、自身のYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」で激しい腰痛の原因ががんの転移であり、肝臓やリンパにも転移が見られるステージIVB(遠くの臓器まで転移した状態)の原発不明がんだと公表した。

原発巣が分からない理由

 それから1年以上たった現在、抗がん剤治療が功を奏し、YouTubeもテレビのレギュラーの仕事も続けられる状態を保っている。

 昨年、拙著の医療監修をお願いした都立駒込病院希少がんセンター長の下山達(たつ)医師と山田さんとで鼎談を行った(集英社オンラインにて公開中)。

 山田さんは24年6月にぎっくり腰のようなひどい腰痛を患い、検査で、骨とリンパ、肝臓に、パチンコ玉をぶちまけたように「がん」だと分かる赤い斑点がたくさん見つかった。5カ月前の人間ドックでは全く異常なしであったにもかかわらず、だ。

 がん細胞が発見されてから1カ月間、さまざまな検査が行われたが原発巣は見つからず、最終的に「原発不明がん」の診断が下された。

 下山医師は鼎談で、原発巣が分からない理由として主に二つの可能性を示唆した。

 一つは、原発巣はあるが、小さ過ぎて現代の画像診断能力(CTや内視鏡)では検出できない場合。もう一つは、免疫などの働きで原発巣自体が消えている場合である。

 ごくまれに感染症などによって免疫が活性化して、がんが小さくなる現象が知られており、原発巣は何らかの理由で消滅してしまったが、そこから飛び出した転移巣(原発巣から別の臓器にがん細胞が転移した病変)だけが残って増殖したケースが考えられるというのだ。

 この場合、転移先の細胞を採取して調べても、その細胞が原発臓器の特徴を失っていたり、がん細胞自体が未分化(成長途中のまま)だったりすると、「どこの臓器から発生したがんなのか分からない」となり、診断は困難を極める。山田さんの場合は、がん細胞が未分化であったことが後に判明したそうだ。

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