キース・ジャレット“伝説的ライブ”の仕掛け人は「18歳の女子高生」だった…史上最も売れたピアノソロの名盤“誕生秘話”を描いた映画「1975年のケルン・コンサート」が話題
「ケルン・コンサート」を「完全再現」する?
少々ややこしいので、その“発展”ぶりを、番号を付けてご紹介しよう。まず〈楽譜〉の出版まで。
【1】1975年1月24日、映画で描かれた、キース・ジャレットの「ケルン・コンサート」開催。
【2】1975年11月、上記のライブレコードが〈ECM〉より発売(のちにCD化)。現在までに450万枚超のロングセラーとなる。
【3】1991年3月、上記の音源を完全採譜した〈楽譜〉が〈ショット・ミュージック〉より出版される(キース自身の監修、前書き付き)。
「この楽譜の登場は衝撃でした。キース自身が監修をつとめ、前書きを寄せているのもおどろきでした。というのも、いままで世界中から、このコンサートの楽譜化の希望が殺到していたものの、キースはすべて拒否してきたのです。理由は、出版譜の前書きにあるように、〈この音楽はある夜に行われたまったくの即興によるコンサートのもので、それは生まれた瞬間に同時に消えてゆくべき性格を持っている。(略)楽譜に書き取っていくということが実際ほとんど不可能な部分がたくさんある。〉というものでした」(元音楽専門誌の編集者)
キース自身、ケルン・コンサートについては、少々、辟易としているフシがある。『インナービューズ――その内なる音楽世界を語る』(キース・ジャレット著、山下邦彦訳、太田出版、2001)のなかで、彼自身、こう語っている。
〈人々は抒情的なケルン・コンサートのようなものを期待する。ぼくは彼らの期待には沿わない。だから彼らの期待は実現しないけれど、彼らはかつて聞いたことのない別なものを得る。しかし彼らはそのことに気づいていない。〉
だが、実際に〈楽譜〉を見たキースは、〈しばしば信じがたいほど、この楽譜は音楽に近づいている。そこで、ついに私はこの監修版楽譜の出版を決意した。〉
「ただしキースは、この〈楽譜〉を全面肯定していません。たとえば〈PartIIaの50、51ページ。(略)レコーディングでは、より多くのことが起こっているのだが、この“起こっている”ことが、紙の上の音符にいつも翻訳されるとは限らない。〉と、突き放しています」
(前出・編集者)
そして、昨2025年は、「ケルン・コンサート」50周年だったこともあってか、“怒涛の展開”となった。
【4】2025年1月、クラシック・ピアニスト山口ちなみが、上記〈楽譜〉を演奏する「The Koln Concert 全曲演奏会」を開催。たいへんな話題となる。その後、再演4回を重ね、毎回ソールド・アウトとなる。
【5】2025年9月、山口ちなみが〈楽譜〉をスタジオ録音。同年12月に〈寺島レコード〉からCD発売(のちにアナログ盤も)。
【6】2025年12月、山口ちなみが、上記CDの発売を記念したコンサートを開催。
【7】上記のライブCDが、2026年3月に〈寺島レコード〉から発売。初回プレスは予約だけで完売。
【8】同年4月、映画「1975年のケルン・コンサート」日本公開。山口ちなみや若井優也による映画公開記念ライブが開催。
というわけで、現在、「ケルン・コンサート」の音盤は、本家キース、山口ちなみのスタジオ録音・ライブ録音の、3種が存在するのである。
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