「天竺川原」の独立は成功するのか 「事務所を離れた芸人」の明暗が分かれる理由
年度区切りに続々
元・天竺鼠の天竺川原が、3月末で吉本興業とのエージェント契約を終了して、独立を果たした。川原本人も手書きの文章で「新しい形のアートやお笑い、そして愛を持って唯一無二の作品を届けていきたいと考えています」と意気込みを表明していた。3月末は年度の区切りということもあって、彼以外にも三浦マイルド、ライセンスの藤原一裕が吉本興業から独立した。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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【写真】「イジり倒していきたい」…“埼玉ポーズ”を取る天竺川原
ここ数年の川原の動きを踏まえると、独立は全くの予想外の事態というわけではなく、既定路線にあるものだったと考えられる。なぜなら、独立に先立って今年1月には天竺鼠というコンビを解散することを発表していたからだ。この時点でコンビの活動には見切りをつけていて、新しい環境で仕事をしたいという思いがあったのかもしれない。また、2020年に吉本興業との契約形態を変更して、エージェント契約になっていたのも、独立への布石だったと考えられるかもしれない。
天竺鼠は「キングオブコント」で三度の決勝進出を果たし、2014年の「ABCお笑いグランプリ」でも優勝するなど、実力派コンビとして高く評価されてきた。川原は奇妙な飛躍、意味不明すれすれの発想、言葉のねじれで笑いを生むタイプの芸人であり、そこには圧倒的なオリジナリティがあった。
また、近年は企業CMの制作、ショートドラマの監督など、幅広い分野のクリエイティブな活動に手を広げていた。本人も今回の契約終了に際して「アートやお笑い」というふうに、アートをお笑いと並列で語っている。つまり川原は、もともと芸人でありながら芸人の枠に収まりきらない人物だったのであり、今回の独立は唐突な路線変更ではなく、自分がやりたいことをやるために最適な環境を選んだ結果だと見るべきだろう。
ただ、大手事務所からの独立はタレントにとって大きな転機になるのは間違いない。そこから飛躍して大きく羽ばたいていく人もいれば、そこで失速してしまう人もいる。明暗が分かれるのは、才能の有無そのものよりも、才能を流通させる仕組みを自前で持てるかどうかにある。
大手事務所に所属している間は、営業、交渉、宣伝、トラブル対応、スケジュール管理、関係各所との調整といった、表からは見えにくい部分をカバーするためのインフラが用意されることになる。独立して自由になるというのは、裏を返せば「誰も面倒を見てくれなくなる」ということでもある。独立後に飛躍する芸人は、笑いの才能に加えて、自分の価値を商品化して、営業の仕組みを整えて、ファンを直接つなぎ止める能力を持っていることが多い。
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