5月から電気代の「爆上がり」でパニックが… 「国民は電気代が上がっていないと錯覚させられているだけ」
【前後編の後編/前編からの続き】
桜の名所は花見客でにぎわうが、後になって“あの頃は平和だった”と振り返る日が来るかもしれない。イラン攻撃による「原油高」への対策を声高らかにうたう高市政権。政策を誤れば電気・ガス代の記録的上昇が確実視され、「家計への影響」は計り知れないのだ。
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【実際の写真】“ガッツポーズで絶叫”だけじゃない! ホワイトハウスが公開した「高市首相」の姿
前編では、ガソリン代への補助金が国民の首を絞める理由や、原油高騰で影響を受ける商品などについて紹介した。
イラン攻撃が長引けば、電気・ガスなどの光熱費が「史上最高値」になる見込みが確実というのだ。
エネルギーに関する経済政策に詳しい、慶應義塾大学産業研究所教授の野村浩二氏が試算するには、
「2022年のウクライナ侵攻時などを参考にすれば、まだ値上がり幅は3分の1程度ですが、今後も需給が逼迫(ひっぱく)して原油やLNG(液化天然ガス)の価格が上昇したら、一般家庭の電気料金が3割増しとなるシナリオを想定しておく必要があります。以前の事例からみれば、電気料金は過去最高を更新する可能性があるといえる。これまでの電気料金が月1万円前後だったら、約1万3000円、年間では3万6000円程度の追加負担が見込まれます」
そもそも、日本における電気料金は、原油価格が密接に関わっているという。
そのメカニズムについて、住友商事時代からエネルギー問題に携わってきた常葉大学名誉教授の山本隆三氏が解説する。
「1970年代初めの日本は、いわゆる一次エネルギーの4分の3以上を石油に頼っていた。その時には日本の発電所の8割弱が石油を使っていました。ところが、1973年のオイルショックで石油価格が4倍に膨らんでしまいました。そこで日本の電力会社は、輸入石炭やLNGを使う発電所や原発を作り、石油への依存度を下げてきた。その結果、今は石油プラントによる発電量は約7%しかありません。一番多いのはLNGで約32%、それに30%弱の石炭火力が続きます」
「年間2万円以上の負担」
万が一、日本の原油在庫が枯渇しても、経済活動に支障がないよう発電できる体制が整えられてきたわけだが、肝心の“電気料金問題”は解消できていない。
「LNGの契約価格は、原油価格に連動して上がり下がりするものが多い。これはヨーロッパが始めた仕組みで、日本のLNG契約の7~8割はこういった契約形態になっています。厄介なことに、LNG価格が上がると、その分を石炭による発電に替えたい国が石炭の輸入量を増やす。そうなると石炭価格も上昇してしまう。発電量の約7割を化石燃料に頼る日本では、間違いなく電気代が上がります」(山本氏)
家計への影響が出るのはいつになるのだろうか。
「電気代は非常にややこしい仕組みで、イラン情勢による化石燃料価格上昇の影響は『燃料費調整額』に反映されます。これは過去3カ月の燃料費の平均額から算出され、例えば今年2~4月の平均額が適用されるのは7月の電気代と、2カ月遅れで影響が出る。加えて、ウクライナ情勢後の激変緩和措置で、国は先月まで電気・ガス代に補助金を出していました。請求ベースでは4月まで少し残っていますが、5月から完全に0円となりますので、その分も値が上がる。また電気代の1割以上を占める再生エネルギー賦課金が、5月検針分から値上げされ平均的な家庭で年間2万円以上の負担となります」(同)
負担増は家計への影響にとどまらない。
前出の野村氏によれば、
「本当のインパクトは電気料金だけにとどまりません。エネルギー消費の半分は石油であり、コロナ禍前と比較すると、日本全体では年間20兆円前後の負担増になり得ます。家計や企業にとっては極めて大きなもので、感覚的には消費税率で5~6%の負担増に相当するインパクトです。さらに、石油備蓄の脆弱(ぜいじゃく)なアジア諸国でエネルギー制約による生産停滞が先行すれば、日本の部品輸入が滞るなど、深化したグローバル化のリスクが顕在化する可能性があるのです」
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