「ぶっちゃけAIで作った動画のほうがクオリティ高くないですか?」 激変する広告業界の現状を“中の人”はどう考えているのか…25年間でネット広告は「70倍増」、新聞広告は「4分の1」に

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 かつては広告業界の花形とされていたTVCMだが、インターネット広告の台頭に押され、いよいよ斜陽化が凄まじくなっている。電通が2026年3月6日に発表した「2025 日本の広告費」を見ると一目瞭然である。ここでは、日本の広告費が圧倒的にネット優位になっている状況と、時代のうねりの中で働く広告業界の現状について紹介する。【取材・文=中川淳一郎】

ネット広告はこの25年で70倍

 まずは広告費全体とその内訳についての数値を詳しく見てみよう。

 ◆全体:8兆623億円(前年比105.1%)
 ◆インターネット:4兆459億円(同110.8%)
 ◆マスコミ四媒体:2兆2980億円(同98.4%)
 ◆「屋外広告」「交通広告」「POP」「イベント・展示・映像ほか」など:1兆7184億円(同102.0%)
 ◆「イベント・展示・映像ほか」:4748億円(同111.2%)

「マスコミ四媒体(TV、新聞、ラジオ、雑誌)」以外は堅調な伸びを示している。比率は、ネットが50.2%で、マスコミ四媒体が28.5%、プロモーションメディアが21.3%だ。ここで感慨深いのが、かつては出稿先として主だった4つのジャンルを「マスコミ四媒体」と、一括りにしているところである。

 ちなみに2025年の「四媒体」の内訳は、テレビが1兆7556億円で、新聞が3136億円、ラジオが1153億円、雑誌が1135億円である。ところで、今から25年前、2000年の広告費はいかなるものだったか。ここでタイムスリップしてみよう。

 ◆全体:6兆1102億円
 ◆マスコミ四媒体: 3兆9735億円
  ・テレビ:2兆1032億円  ・新聞: 1兆2474億円
  ・雑誌:4401億円
  ・ラジオ:1828億円
 ◆インターネット広告:590億円
 ◆プロモーションメディア: 2兆777億円

 なんと、ネット広告はこの四半世紀を経て70倍近くに高騰しているのだ。ネット広告の隆盛は当然、アメリカでも起きている。米ニュースサイトBusiness Insiderは、3月11日に「YouTubeは今やディズニー、NBC、パラマウント、ワーナーブラザーズディスカバリーを合わせた以上の収益をあげている」という記事を配信。YouTubeの広告収入が404億ドルだったのに対し、4社合計は378億ドルだった。

ネット用の動画をついでにTVに流す時代

 世界的にネット広告のシェアが拡大している今、アメリカがすでにそうなっているように、テレビでは地上波の番組ではなく、YouTubeやNetflixを視聴するのが主流になっていくだろう。もっとも、日本の場合は高齢の視聴者層が多いため、アメリカほど急速ではないかもしれないが。

 広告費の配分が大きく変わり、かつてガリバー的だったTV広告費がネットに取って代わられているが、これと連動するように、広告業界の働き方にも変化は見えてきている。

 たとえば「CMプランナー」と呼ばれる職種がある。彼らの仕事は、CMのストーリーやメッセージを考えること。大手広告会社では花形職種だが、最近はこの呼称を用いない会社が増えてきている。

 というのも、最近は「CM」だけでなく、ネットや屋外広告もセットで考えなければならず、いわゆるTVで流す「CM」だけを作るわけではないからである。なので旧来の「CMプランナー」たちは、「映像プランナー」などと呼ばれるようになっている。

 ちなみに、2000年には2.1兆円あったテレビ広告費は、2025年には1.75兆円。紙メディアと比べれば意外にも落ち込みは緩やかなのだ。なぜ持ちこたえられているのか。その理由を、大手広告会社営業担当者が語る。

「元々TVCMの制作自体は儲からないものでした。あくまで我々の儲けは、CM枠の仲介によるコミッションビジネスです。ネットが台頭し始めた21世紀前半頃、広告主から『扱い額を増やすからコミッション率を下げてよ』とお願いをされ、準大手・中堅広告代理店が安売りをする流れになりました」

 であれば、テレビの広告費はもっと急降下してもおかしくないはずだが、

「ところが、電通と博報堂という業界のトップ2が4マス(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)、とネット、屋外広告を連携させるプランニングを提案。CM仲介も含めて、まとめてお願いするクライアントが多かった。そのため、大手2社についてはTVCMの仲介業務ではそこまでダメージはないと聞きました。これが、落ち込みを緩やかにしている原因と思われます」

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