【フジコ・ヘミング3回忌】ボロ着で浮浪者に間違われ、ピアノを弾いて“身分証明”…天才ピアニストの知られざる素顔

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ホームレスに間違われて

 中嶌さんとも知り合いであり、フジコさんと生前交流があった編集者・Mさんも彼女の一面を知る一人だ。彼女のコンサートを取材・インタビューし、その後、パリのアパルトマンにも遊びに行く仲だった。

「2010年、フジコさんがパリに滞在していたタイミングで僕もたまたま行ったんです。フジコさんの取材前から甥御さんと知り合いだったのですが、彼から“パリに行くなら、せっかくだから叔母のところに顔を出してきて”と言われて」

 Mさんが訪れたのは、パリ市庁舎の近くにある築400年ほどの建物を利用したアパルトマン。

「お昼すぎに“ご無沙汰です”とお邪魔したら、ケーキを買って待っていてくれた。紅茶を飲みながら色々な話をして、気がついたら夕方の18時(笑)。インタビューの時もそうでしたが、フジコさんは相手と気が合ったり、自分の興が乗ってくると、話が止まらないタイプ。寂しがり屋なのかもしれませんが、本当に裏表がなく面白い人でしたね」

 その時に聞いた話で、いかにも「フジコさんらしい」と感じたエピソードを語ってくれた。

「フジコさんがドイツに滞在していた時の話です。犬の散歩をしていたら、事故にあってしまった。すぐに救急車を呼ばれて病院に運び込まれたのですが、そのとき着ていた普段着が、言葉は悪いのですがボロボロ。病院で浮浪者と間違われたそうです」

 ドイツにはひとりで滞在していたので、誰も呼ぶことができない。手持ちのお金もなかったので、病院から出ることもできなかったという。

「“私はピアニストだから、ちゃんとお金を支払うことはできる”と話をしても、病院側は信じてくれなかったそうです」

 困ったフジコさんは、病院のレクリエーション室にピアノを見つけた。

「そのピアノで数曲、弾いてみせたそうです。それを聴いた病院側がようやく信じてくれて、病院を出ることができたとか……。“見てくれで判断するなんて失礼しちゃうじゃない!”なんて本人は笑い話にしていましたね」

 ***

 2023年に自宅で転倒し、脊髄損傷の大怪我を負ってからは、ピアノを弾くこともできなくなってしまっていた。

「それでも私は、永遠に、永遠に生きて永遠に弾くことはできるわよ」

 その言葉通り、彼女が残した“鐘(カンパネラ)”の音は、今も人の心で鳴り続けている――。

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