妻を尾行し、目撃した光景に浮気を“確信”…それでも追求しない47歳夫が始めた「ピュアすぎる恋」
帰宅した芽依さんは…
最寄り駅で降りると、朝から営業しているパン屋さんが目に入った。そういえばここのパンがおいしいと妻が言っていたなと思いだし、子どもたちに買って帰った。東京駅で見た光景が現実なのかどうか曖昧になっていく。
「その日、息子は部活があると出かけ、娘は友だちの家で遊ぶと言って、やはり出かけていきました。ふたりとも夕方には戻ると言い残して笑顔で出ていった。おふくろは『今日はハンバーグかなあ。あんた、手伝いなさいよ』といつも通り。日常ではないところにいるのは僕だけかと思っているうちに、リビングのソファでうとうとしてしまって。前の晩、一睡もできなかったんですよ。2時間ほど寝て散歩に出ました。考えても考えても、何の答えもでなかったけど、答えが出るような事態でもないなと」
これ以上、考えても意味がないと悟ったのだと剛司さんは言った。翌日、芽依さんは大阪のお土産をもって夕食前には帰ってきた。相手の男も家庭もちだなと剛司さんは感じた。なんとか抑制しながらつきあっているのだろう。そうでなければ夕飯前に帰宅するはずはない。
「その晩、どうだったと尋ねると彼女、けっこうセミナーの様子を詳細に言い始めたんです。おそらく参加したのは本当なんでしょう。相手は同業者なのか、あるいはほんの1時間くらいいて抜け出したのか。いい勉強になったわと言って『留守にしてごめんね。ありがとう』と抱きついてきたんです。本能的に体をよけそうになったけど、自分の意思に反して、僕は彼女を抱きとめていた。妻は僕の頬にキスすると『さすがに今日は疲れたわ。寝るね』と自分のベッドに行ってしまいました。男と旅行してきて帰宅したら夫と関係をもつほど、妻も阿漕な女ではなかったということかと感じましたね」
とうとう啓子さんに相談すると
週明けに出社すると、剛司さんは啓子さんをランチに誘った。そこで「友だちの話」として自分の話をした。啓子さんは「ふうん。それでその友だちはどうするつもりなの?」と言った。
「どうするつもりなんでしょうと思わず言ったら、『どうしたいのかね、その人。離婚したいのかしら』って。確かにそうだよな、離婚するのか継続するのか、結局、どちらかなんだよなと思い至りました。『離婚するつもりはないみたいだけど、このままというのも釈然としないんじゃないかな』と言うと、『友だちも浮気しちゃえばいいじゃん』と啓子さんはガハハと笑ったんですよ。え、そういうもの? と言ったら、『そんなもんでしょ』って。なんだか急に気が楽になりました」
ランチを終えて並んで職場に戻るとき、啓子さんは「友だちに言っておいて。職場だけはやめておけって」と笑顔を見せた。剛司さんは何を思ったか、突然、啓子さんにすがりつくように「僕の浮気相手になってもらえないかな」とつぶやいた。
「最初からあなたのことだってわかってたわよ。だから言ってるでしょ、職場はやめておけってと啓子さんは真顔で言いました。でも僕は確信したんです。啓子さんなら秘密を守ってくれるって」
浮気返ししたところで気持ちはスッキリしないと思うよと啓子さんは諭すように言った。だがそんな言葉も剛司さんの耳には入らなかった。
「復讐したいわけじゃない、自分の存在意義を見いだしたいんだ、そのために協力してもらえないだろうかと啓子さんに頼みました。啓子さんは、『それで私が女としてあなたに満足しなかったらどうするの? 存在意義がなくなるかもしれないわよ。あなたの論法で言えば』って。確かにそうだ。それでもいい、何かをジャッジしてほしかった」
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