山田裕貴×綾野剛「ちるらん」大ヒットが示す「時代劇」の可能性 「地上波×配信」ドラマ新時代の仕組み
若者は時代劇が好き
通常、プライム帯(午後7~同11時)の1時間ドラマの制作費は約3000万円。低視聴率局には2500万円以下でつくっている廉価ドラマもある。もうCMが高く売れる時代ではないから、通常のドラマで億単位の制作費を出すのは不可能に近い。
最も制作費が潤沢なTBSすら2008年度に1200億円あった予算が2024年度には973億円に減ってしまった。経費は増えているのに制作費は減少している。低視聴率による収益低下が続く局は資金繰りに苦しみながらのドラマづくりを強いられている。
そんな中で「ちるらん」がどうして桁違いの制作費を出せたのか。TBS、同局系列の大手配信動画サービスのU-NEXT、さらにTHE SEVENの共同制作だからである。
THE SEVENは世界を視野に入れたドラマ・映画の制作会社。TBSホールディングスが出資し、約4年前に設立された。「ちるらん」を直接つくり上げたのは同社である。
「制作費の多くはTBSとU-NEXTが負担した」(制作関係者)。系列にU-NEXTを持つTBSの強みだ。WBCを放映権料約150億円でNetflixが国内独占放送したことからも分かる通り、配信動画サービスにはカネがある。
TBSだけが得をしているわけではない。U-NEXT側もスペシャル版以降の物語を毎週金曜日に配信できるからメリットは大きい。契約者増につながるはずだ。
民放と系列の動画配信サービスの連動は日本テレビとHuluが先行した。連続ドラマ「愛してたって、秘密はある。」(2017年)が最終回の終了後、サイドストーリーをHuluで流した。
同「あなたの番です」(2019年)も最終回終了後にサイドスリーを配信。しかし、あまり評判が良くなかった。地上波と動画配信の連動が早過ぎたようだ。
あるいは連ドラの結末が配信動画でしか観られないと誤解が生じたためかも知れない。「ちるらん」の場合、それを観ただけでも楽しめる独立したスペシャルドラマが2本放送されたあと、その後のドラマを動画配信にした。目下のところ目立った反発はないようだ。
カネはかかるが、時代劇は優良コンテンツ。若い層は時代劇から離れたわけではない。毛嫌いするのは1時間で正義の味方が悪党を倒すパターン化した時代劇である。むしろ若い層は時代劇が好き。
それは全5作の映画「るろうに剣心シリーズ」(2012~21年)の大ヒットからも分かる。やはり大ヒットし、夏に第5弾が公開される「キングダムシリーズ」(2019年~)も中国版の時代劇だ。
なぜ、若い層は時代劇を好むかというと、現代劇にはないスピード感があるから。現代劇では描きにくい命懸けの真剣勝負も存在する。現代劇で描くと臭くなってしまいがちな熱い友情、純愛も時代劇に変換すると、不思議と受け止めやすくなる。
また現代劇は暴力表現に限界がある。しかし時代劇は規制が緩やか。「ちるらん」には芹沢が浪人の片腕を切り落とすシーンがあったが、現代劇で同じような描写をするのは不可能だろう。
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