なぜ名門野球部で「少女のわいせつ動画」拡散が相次ぐのか…“閉鎖的な空間”で暮らす“結束の固い集団”をエスカレートさせる“道具”とは

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 第98回選抜高校野球大会は3月19日に開幕し、熱戦が繰り広げられている。決勝戦は3月31日に行われる予定だが、そうした中、「改めて高校野球のあり方を一度、徹底的に見直してほしい」という意見がSNSでは少なくない。なぜ批判が後を絶たないのか。それは高校野球では名門高とされる日大三高(東京都)と延岡学園高(宮崎県)の野球部で、問題動画の拡散・共有という事件が発生し、その善後策が充分ではないと受け止められているからだ。

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 まず日大三高のケースから振り返ってみよう。少女に問題動画を自撮りさせ、さらに他人に提供したとして、警視庁は日大三高の硬式野球部員2人を2月に書類送検した。

 うち1人は少女が自撮りした動画などを送らせ、SNSを通じて別の部員に転送した疑いが、もう1人の部員は受け取った動画を別の複数の部員に提供した疑いが持たれている。

 朝日新聞は《警視庁は十数人が動画の提供に関与したとみており、結果的に部内の二十数人に渡ったとみている》と報道。(註)さらに東京地検立川支部は3月19日付で部員1人を東京家裁立川支部に送致した。

 延岡学園高の事件は、3月17日に共同通信が記事を配信するなどして発覚。各紙の報道によると、1人の野球部員が女子生徒とのビデオ通話を通じて問題動画を撮影。別の部員が無断でそのデータを野球部員のLINEグループに拡散させた。

 撮影した部員には鹿児島家裁の少年審判で保護観察処分が下された。さらに複数のメディアが「撮影した部員と拡散した部員の2人は高校を退学した」と報じた。

 担当記者は「2校の野球部員が引き起こした事件が、SNS上では“高校野球全体の問題”として受け止められているのは、関係者に真相解明や再発防止を徹底するという強い意欲が感じられないからです」と言う。

歪んだ自己顕示欲

「高野連が事件の発生を強く憂慮し、再発防止に向けて第三者委員会を設立したり、問題動画の拡散を防ぐ新たなガイドラインを発表したりすれば、世論の受け止めは全く変わったでしょう。日大三高も延岡学園高も『被害者の尊厳を守る』という強いメッセージを発したとは言えず、『事件を起こしたのは部員であり、野球部の問題ではない』という消極的な姿勢だと受け止められてしまいました。SNSでは野球部という“閉ざされた空間”が事件の温床になったのではないかとの指摘が相次いでいます。もし、これまでの報道が正しければ、部員の大多数は『動画の共有は間違っている』との声を上げなかったことになるからです」

 東京未来大学副学長の出口保行教授は犯罪心理学が専門だ。大学院を卒業後、法務省に心理職として入省し、全国の少年鑑別所・刑務所などで犯罪者の心理分析に携わった経験を持つ。

 少年犯罪にも詳しい出口教授は、まず動画や画像を撮影した野球部員について「歪んだ自己顕示欲が存在すると考えられます」と言う。

「前提として支配欲の強さを指摘することができると思います。被害者に自分の命令を従わせることで快感を得ていたのでしょう。そうして取得した動画や画像が拡散した際、『自分はこんなことができる』という歪んだ自己顕示欲を満足させた可能性があります。その後の拡散も含め、この事件の背景にあるのは『モラルスリップ(道徳的逸脱)』でしょう。このモラルスリップは高校生のような青年期に起きやすく、非行につながるケースも多く認められます」

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