「ファン全員の葬式に行きたい」高齢者に推されすぎる元48アイドルがファン特典に生存確認電話を設けた訳 孤独死を防ぐ「推し」とファンとの絆

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田中菜津美インタビュー 後編

 元HKT48で現在は福岡でフリータレントとして活動する田中菜津美さんは、HKT48でのアイドル時代から高齢ファンが多かったという。そんなファンの姿が話題になった「おじばかりのバスツアー」について語った【記事前編】、アイドル時代の彼らとの交流を明かした【記事中編】に続き、後編では、田中さんがファンクラブの特典に「生存確認電話」「安否確認LINE」を設けた訳や、そこから見えてくる日本社会の問題を聞いた。

――年配のファンが多い田中さんですが、ファンクラブに「シニアプラン」があるのも特徴的です。会員限定のブログやショート動画など通常のプランに、月1回1分の「生存確認電話」、月2回の「安否確認LINE」があるという大変ユニークなものです。

田中:ファンクラブのプランを考える時に、機能として電話とLINEのチャットができると知って、めちゃいいなと思ったんです。

 もともと私のファンは独身の方が多くて、一人暮らしも多いんです。実際にファンの間では「自分がもし急に亡くなってしまった時は、みかんちゃん(田中さんの愛称)に伝えてね」と約束し合っていて、お互いの連絡先を交換したり、入院したらファン仲間にとりあえず伝えるということをやっていたんです。

「シニアプラン」を始める以前から、それこそイベントに2、3回と急に来ないファンがいたら、心配になって毎回SNSでDMを送ってたんですよ。「元気ですか?」「体調崩してないですか?」って。他にもファンの方にはインスタにちゃんとコメントしてねとも頼んでいて。生存確認をしたかったんです。だって、急に死なれたら本当に悲しいから。

――「シニアプラン」というネーミングは攻めましたね(笑)。

田中:炎上するかなとも思ったんですけど「素晴らしいです」「これはもっといろんな界隈で導入すべきだ」とコメントされていて「えー!」となりました(笑)。

――実際に「生存確認電話」「安否確認LINE」をやってみてどうですか?

田中:めっちゃいいです! 電話ができるので、ファンの方から「職場でこういうことがあったんだ」とか「ちょっとうつ病っぽいんだよね」と相談を受けたりもします。悩みって、なかなか言いづらいじゃないですか。

 でもファンの方は「みかんちゃんにだったら言おうかな」と思ってくれているみたいで。

 悩みだったり、自分では病気だと認められず、足が向かない人もいます。でも好きなアイドルから「病院に行ってみたら」と言われたら、また違うのかなって。シニアプランがいいきっかけになれているのかなと思っています。

ファンじゃないのに「シニアプラン」に加入

――高齢者の孤独は社会問題ですが、田中さんはもともとアイドルだけに壁が取れるわけですね。「シニアプラン」が現代の日本社会に必要なサービスかもしれませんね。

田中:今、「こころ‐ね」さんというメンタルカウンセリングの会社で、アンバサダーをさせてもらっているんですが「心の問題を抱えている方は自分から一歩踏み出す力がないから、手を差し伸べてあげるサービスが必要なんです」と教えてもらいました。今、私がやっているシニアプランとすごいマッチしているんじゃないかと思っています。ファンの方も、お金を払ってるからこそ、私にいろいろ悩みを言ってもいいよねとたぶん考えてくれていると思います。

 意外と元気そうに見えている人が悩みを抱えていることが多いんですよ。いつもイベントの時は私をめっちゃ笑わせてくれるファンの方が、LINEの中で「実は通院しているんだよね」と明かしてくれたこともあります。私も全然ファンの方を理解できてなかったなって思いました。

――もうアイドルとファンの関係を超えた関係ですね。

田中:“オタ活”って言ったらリラクゼーションじゃないですか。日頃の疲れを非現実世界で癒してくれる。他のアイドルさんも、ファンの方の話を聞いて「そうだね、そうだね」ってうなずくのも、知らず知らずのうちにリラクゼーションになっていると思うんです。

 シニアプランのことを知って、私のファンじゃないのに加入してくれた方もいました。理由を聞いたら「自分、50代になったので。安否を確認してほしいんです」と言われて。だけど保険に入るのはなんか悔しい。私のシニアプランだと月一で生写真が届いたりと、オタ活の一種としてカジュアルにできるので、そのあたりも気が楽みたいです。

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