「ウチのカミさんがね…」を“コロンボ節”にした「小池朝雄さん」 54歳で息をひきとる間際、妻に残した言葉とは

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実力派俳優だからこその「コロンボ」

 数多くの作品に出演した米国の名優、ピーター・フォーク。なかでも知名度抜群の作品といえば、1968年から続編を含む全69話に主演したテレビドラマ「刑事コロンボ」である。野暮ったい風貌ながら高い捜査能力を持つ刑事が、社会的地位の高い知能犯たちの完全犯罪を打ち砕くという基本構成は、世界中で人気を博した。

 日本では1972年からNHKや民放で放送され、「ウチのカミさんがね……」のセリフは今でも代名詞的存在だ。吹き替えを担当した俳優・小池朝雄さんの功績だが、実のところ小池さんはシリーズ続編(「新・刑事コロンボ」)に出演していない。1985年3月23日に小池さんが54歳で死去したことを受けて、石田太郎さん(2013年9月21日没)がコロンボ役を引き継いだ。また、銀河万丈さん版のコロンボも存在する。

 コロンボを演じた当時、小池さんはすでに有名俳優だった。死去までに大河ドラマや刑事ドラマ、時代劇、やくざ映画など多様な役柄を演じ、アニメ「あしたのジョー」ではエンディングテーマ「ジョーの子守歌」で美声を響かせている。演技力と経験値を培った実力派だったからこそ、今も忘れ得ぬコロンボを生み出すことができたのだ。命日にあたり、小池さんの素顔と生涯を振り返る。

(以下「週刊新潮」1985年4月4日号「墓碑銘」を再編集しました)

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原作通りではないコロンボ

 ヨレヨレのコート姿と、「ウチのカミさんがね……」のセリフ――とくれば、ご存じ「刑事コロンボ」。繰り返し放送されている人気番組だが、声の吹き替えがこれほど主人公のキャラクターに影響を与えた例も珍しい。

「刑事コロンボ」のイメージは、主演のピーター・フォークより、むしろ、アテレコをした小池朝雄さん(54)の独特のセリフ回しに負うところが多いとさえ言えるかもしれない。小池さんもこう語っていた。

「アテレコは自分で演技ができないから苦労する。コロンボの時は言い方も工夫し、余分なセリフを言ったり省いたり。原作通りじゃないんです」

 文字通り、「小池朝雄の刑事コロンボ」だったわけだ――。

不思議な人徳があった

 小池さんは昭和25(1950)年、都立青山高校卒業とともに、文学座の演劇研究所に入っている。翌年、「崑崙山(こんろんざん)の人々」(飯沢匡・作)で初舞台を踏む。

「手とり足とりして教えた思い出がいつまでもつきまとっていますよ」

 と語る飯沢さんによれば、

「ニコニコして人なつこい人でした。私は貸衣装がいやなので、当時、日本ではほとんど見かけないエルメスなんかの服をフランスから買ってきて、役者に貸すんです。すると彼は、『これ、いただきね。先生より僕の方がずっと似合う』と笑いながら言って、絶対に返さない。それでいて誰にも憎まれない、不思議な人徳がありました」

 昭和38(1963)年、他の劇団員らと共に文学座を退団し、現代演劇協会「劇団雲」の創立に参加。さらに「劇団雲」の分裂を経て、「劇団昴」に参加した。なお、小池さんの死後にコロンボ役などを引き継いだ石田太郎さんは、この両劇団での後輩にあたる。

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