「ネトフリ」独占配信に賛否のウラで…WBCを生中継した「ラジオ」の底力 元実況アナが明かす「音だけのメディア」の強み
予想外の敗退……侍ジャパンの闘いが終わりました。残念ながら連覇はなりませんでした。世界の壁は相当高かったことが分かります。ところで今回のWBCでは、野球ファン以外にも大きな課題を提示しました。それは「テレビ中継」です。地上波で、タダで観戦できる時代はもう過ぎ去ってしまったのでしょうか……ラジオの現場で35年間、放送を続けてきた村上和宏さんが背景を解説してくれます。
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来るべき時が来た
これが、世界が本気になって臨んだ今大会の難しさだったのでしょうか……侍ジャパンは、一度は逆転に成功しながらも再度逆転され、ベネズエラに敗れて準々決勝で姿を消し、連覇はなりませんでした。悔しい結果になってしまいましたが、まずは「お疲れさまでした」という言葉を贈ります。
これまで、支配下選手の出場に後ろ向きだったMLB各チームが、今大会は選手の意思を尊重して出場を容認する姿勢に方針転換したことで、準々決勝で日本を破ったベネズエラをはじめ、各国がMLB所属のスター選手をずらりとそろえる、豪華なメンバー構成になりました。
もちろん、これが日本敗退の原因とは思いません。が、生き馬の目を抜く厳しい競争社会で、その地位を自らの力で獲得したMLB選手たちのここぞという場面での集中力。乗ってくると止めるのが難しい勢いなど、あくまで「終わってみれば」になってしまいますが、前回大会以上の「厚い壁」に挑まなければならなかったのは事実だと思います。
侍ジャパンの戦いぶりについてはいたるところで分析がなされ、多くの評論家もコメントを出しておられるので素人の私の感想はこのくらいにして、今大会で起きた最も大きな変化について思うところを綴りたいと思います。
最大の変化とは、言うまでもなくNetflix(ネトフリ)による中継の独占です。これまで(NHKも含めて)地上波のテレビが放送してきた中継が、有料プラットフォームであるネトフリ加入者しか視聴できないというのは、我が国のスポーツ中継において大きな転換点というべき大事件でした。
近年、五輪やサッカーW杯での「放送権料」の急激な高騰は、既存の放送局にとって相当な負担で、現場では「このままでは、いつまで中継ができるかわからない」という声が聞こえていました。
今回「WBC中継はネトフリ独占」のニュースが流れた際、私が抱いた率直な思いは「来るべき時が来たな」でした。
WBCのような世界大会については「ユニバーサルアクセス権」、つまり国民的関心が高いスポーツは誰でも見る権利がある、という考え方があり、国によってその内容に違いはあるものの、イギリスや韓国など法制化されている国があります。
我が国ではこれまでこうした事態が起きてこなかったからこそ、今回のネトフリ独占によるインパクトは絶大でした。その是非については、既にさまざまな立場の人たちから意見が述べられ、議論にもなりましたし、特に大会が始まってから「地上波のテレビで中継がない」ことが現実のものとなって以降は、さらに賛否入り乱れる状況になっているのはみなさんもご存じのとおりです。
その上で、私見を述べますが、有料チャンネルや、ネトフリのようなストリーミングサービスが権利を独占するケースが世界的に増えている流れの中で、日本だけがその潮流に飲み込まれずに済むとは思いません。こうした流れを前提として、ユニバーサルアクセス権を認めて法整備するのか、このまま自由競争に任せるか、政府や国会も巻き込んだ議論が必要だと思います。
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