こんなに「贅沢で忍耐強くて完成度の高い」作品はそうない! 10年続くドラマ『ひそたの』に注目
「継承」の難しさとはちょいと縁がある。100年以上続く家業を継いだ夫が自分の代で閉じたからだ。原料の質の低下&価格高騰で物理的に継続が難しく、廃業を決断。夫は長いこと自責の念を抱えていた。代々続く商売の家に生まれた長男の複雑な心境を垣間見た。なので、それこそ100年どころの話ではない老舗や名跡の継承問題を描く作品には興味津々。京都人の本質と美学を堪能できる「京都人の密かな愉しみ」シリーズ、今回は継承がお題だ。
【写真を見る】表情は初々しく、美貌は変わらず… 27年前の「常盤貴子」
2015年に始まり、不定期にシリーズ化してきた「ひそたの」(勝手に略したが、しっくりこない)ファンにとっては、過去作ではんなりと描かれてきた背景が鮮やかに輪郭を形成した印象だ。約10年かけて、登場人物たちの生きてきた時間軸を映し出す。こんなに贅沢(ぜいたく)で忍耐強くて完成度の高いドラマはそうそうない。
シーズン1の主人公・沢藤三八子(みやこ/常盤貴子)は京都で約240年続く老舗和菓子屋・久楽屋春信(くらやはるのぶ)の9代目若女将(おかみ)だったが、長いこと道ならぬ恋をしていた。パリで和菓子職人として成功した三上驍(すぐる/石丸幹二)と暮らすために、京都を離れた。シーズン2「Blue 修業中」は京都で伝統を守る若き職人たちを主軸に描かれた。
で、今回の「Rouge」は待望の続編。驍の娘で、京都生まれ・パリ育ちの洛(みやこ/穂志もえか)が久楽屋を継ぐ意図を密かにもって京都へ。というのも、三八子の母で8代目女将の鶴子(銀粉蝶)が胃がんを患い、廃業を覚悟していると知ったからだ。洛は聡明でソルボンヌ大卒の才女だが、パリで育った現代っ子。立ちはだかる壁は、腹の中を見せない難解な京都人の気質。実は最大の壁は、洛を心配して京都に戻ってきた三八子でもあり。はんなりの権化、THE・京都人の三八子が心配&けん制するほど、逆に燃え上がる洛。頑固な京都人 VS.勝ち気なパリっ子の構図。三八子は弁護士の異母弟(深水元基)に協力を仰ぎ、秘密裏に洛を支えるもくろみがある模様。数枚上手のようだ。
やや複雑なのは、三八子は洛にとって継母だが、もとは父の不倫相手。洛の実母は病気で他界したが、その前から関係があったわけで。人間関係に含みのある事情やうしろめたさを背負わせている点が大好物。京都という魔窟の面白さや伝統や風習を重んじる美意識の尊さで魅せるだけじゃないのよ、このシリーズは!
もちろん、久楽屋以外の継承も描かれる。「洛中」の自負と京都人プライドが強烈な老舗呉服屋の父子(段田安則&杉田雷麟)は血縁の呪縛が色濃く、作庭家・美山清兵衛(石橋蓮司)の後継者は英国で造園を学んだ若き弟子・若林ケント幸太郎(林 遣都)に託された。継承にも多様性という展開だ。
今回は洛が通う大学院の東雲朔太郎教授(渡辺 謙)や、京都に憧れの強い栃木県出身の水上柊子(ひいらぎこ/森田 想)など、非・京都人の存在と視点も織り込まれ、世界観が広がった気もする。過去作の出演陣も次々と登場、終焉(しゅうえん)に向かうように見えるが、NHKはこのドラマを継続していくべきよ。それこそ継承、文化遺産にでもしてさ。







