「ナチュラル」会長逮捕でも「メンバーには給料が支払われ、組織は平常運転」…マル暴刑事まで懐柔する「凶悪スカウト集団」を重罪に問えない事情とは

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「ウイルス」

 地方公務員法(守秘義務)違反容疑で警視庁に逮捕されたのは、警視庁暴力団対策課の警部補だった神保大輔被告(43)だった。ナチュラル内部において警察は“ウイルス”や“プロ”などと呼ばれ、摘発を防ぐための対策が講じられていたが、彼らはその警察までも取り込んでいたのである。神保被告は、警察が監視していた会長の自宅や関係先に設置されたカメラの位置をナチュラル側に漏らしていた。

 清水氏は神保被告の逮捕前から、警察による情報漏洩について、取材で耳にしていたという。

「神保被告の名前は知りませんでしたが、ナチュラルに警視庁の協力者がいるとの噂は聞いていました。実は、取材を進めるなかで、私が独自に警察から得た情報と同じ内容を、ナチュラルの関係者から聞くことがあったんです。なぜナチュラルが警察の情報を共有しているのか疑問を持ちました。2月26日に開かれた神保被告の初公判では、自宅から約900万円の現金が見つかり、紙幣にナチュラル関係者の指紋が付着していることも明らかになりました。神保被告はプライベートで複数の離婚歴があり、子供もいた。弱みを握られ、また、金を握らされてナチュラルに絡めとられたのではないかと見ています」

 そのうえ「警察の協力者は複数いると聞いています」と、取り込まれている捜査機関の人間は、神保被告ひとりだけではないとも言う。こうした困難を伴う捜査において、さらなるハードルとなっているのがナチュラルの“現金主義”である。メンバーへの支払いや金の移動など、全てを現金で行うため、カネの流れを把握することが困難となっている。

「会長の逮捕によりビビっている状態ではありますが、現在に至るも、おおむね平常運転といった印象ですね」とナチュラル内部について語る清水氏だが、実のところ「ナチュラル自体を攻撃しようという意図は持っていない。むしろこうした組織を生み出している社会のありかた、若者の価値観の変化を知りたい」という思いから取材を続けてきたのだという。

まっとうな会社で働くのは「タイパが悪い」

 スカウトとして稼働するのは男性であり、また多くが大学生などの若者である。もし大学生の頃にスカウトを始めたとしても、就職活動を機に足を洗うこともできる。にもかかわらず、大学を卒業しても続けている若者がいるという。なぜなのか……と問うと、清水氏はこう解説してくれた。

「まっとうな会社で20年働き続け、下積みから始まってさまざまな経験を積むことは自分の財産となります。しかし、いまの若者たちはこれを“タイパが悪い”と思うようです。彼らにしてみれば“20年の会社勤め”は長すぎるし、10年修行することさえ“ちょっとな……”と思う。もっと手っ取り早くお金を稼いで、それを元手に起業したり、自分の思い描くビジネスを展開したい。だから“とりあえずお金が欲しい”と語るメンバーは結構いました。ナチュラルでスカウトに精を出して月200~300万円もらったとして、5年も続ければまとまったお金ができますからね」

 スカウト行為に対する締め付けは急激に厳しくなっているが、

「とはいえ、“トクリュウ”と聞いてイメージするような強盗や特殊詐欺に手を染めるわけではない。ナチュラルのメンバーの多くはスカウトを“ぎりぎりグレー”だと考えている。“たぶんグレーな仕事だけど、とりあえずパパっと稼いで、それを元手に自分の好きなことやりたい”というマインドですね。彼らの多くは頭が良くて、コンサルや営業職でも活躍しそうな雰囲気がありました。地道にキャリアを積むより、グレーな仕事であっても“まずはとにかく稼ぎたい”と。そうした若者の価値観と合致したのが、組織として極めて合理的で高額の報酬を期待できるナチュラルだったのかもしれません」

 多くの若者を取り込んで、膨張し続けるトクリュウ型犯罪集団――。高学歴なメンバーを動かす驚愕のシステムについては、前編【“異形のスカウト集団”メンバーには「早慶MARCH」の大学生も…“自前のアプリ”と“凄惨な暴力”で支配する最凶トクリュウ「ナチュラル」の実態】で報じている。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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