300人組織をまとめた「AKB48総監督」の経験は“本物の実務”である 高橋みなみが「大学客員教授」に就任する必然

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メンバーたちのモチベーションを維持

 高橋の名前を広く知らしめたのは「努力は必ず報われると、私、高橋みなみは人生をもって証明します」というスピーチである。この言葉はAKB48の精神を象徴するものとして語られることが多く、彼女のキャラクターはしばしば「努力」「根性」「リーダーシップ」といったイメージと結びついてきた。

 しかし、このスピーチの背景には「アイドルとして成功することは不確実で困難であるからこそ、努力を絶やしてはいけない」という彼女なりのリアリズムがある。芸能の世界では努力しても必ず成功するわけではないが、それでも努力し続けるしかないという厳しい現実がある。高橋はその現実を受け止めながら、メンバーたちのモチベーションを維持する役割を担っていた。

 その点で彼女のキャリアは、一般的なアイドルの芸能活動とは少し性質が異なる。単にステージで歌い踊るだけではなく、大規模な組織の現場マネージャーのような役割を果たしていたからだ。メンバーのメンタルケア、チームの雰囲気作り、運営との調整など、実務的なリーダーシップを日常的に発揮していた。

 大学側が今回の招聘の理由として挙げている「高い表現力」「的確なコミュニケーション力」「人と人をつなぐ力」という言葉は、このような彼女の経験に裏付けられていると考えられる。

 元アイドルが大学の客員教授になるということだけを聞くと、意外に感じられるかもしれない。しかし、AKB48という巨大な組織をまとめ上げてきた高橋みなみの総監督としての経験を踏まえると、その人選には合理性がある。エンターテインメントの現場で生き抜くためのリアルな知恵を伝えるという意味では、彼女の言葉は学生たちにとって決して軽いものではないはずだ。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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