文化財への“落書き”はすべて外国人観光客のせいなのか? 実際には「訪日ブーム」より前から寺社仏閣への落書きは絶えなかった問題
国会議事堂にも落書きがある
国会議事堂の衆議院本会議場を訪れたときに驚いたのは、なんと議場の傍聴席にも落書きがあったことだ。つやつやに磨かれた柱には、“S.Y”とイニシャルを彫ったと思われる跡があった。他にも、木製のパネルには名字を書いたと思われる落書きも見つかった。大胆不敵な落書きだが、ずっと放置されているようで、消そうとした形跡はない。
阪急の京都河原町駅の近くには八坂神社の御旅所がある。御旅所の社殿は重要文化財に指定されているが、その脇にある漆喰の壁も落書きだらけである。京都の社寺仏閣では、修学旅行生が記念に書いたと思われる落書きが多い。旅の記念に、そんなものを残さなくてもいいと思ってしまうのであるが。
とにかく、どこに行っても落書きは普通に見つかる。こうした自分たちのマナーの悪さを棚に上げて、外国人ばかりを叩くのはいかがなものだろうか。もちろん、日本人であろうと外国人であろうと、落書きをすべきでないのは言うまでもない。結局のところ報道される被害は全体のごく一部であり、インバウンドブームが起こる前から文化財への落書きは珍しくないということがわかる。
落書きされないためにはどうすれば
社寺仏閣などの文化財所有者が、落書きに悩まされているケースが少なくない。では、未然に防ぐためにはどのような対策をとればいいのだろうか。まず、定期的に掃除を行い、文化財を可能な限りきれいな状態に保つことだ。掃除がされ、汚れが少ない場所であればあるほど、心理的に人は落書きをしにくくなるのである。いわゆる「割れ窓理論」だ。
落書きは一度誰かが書いてしまうと、一気に増殖する傾向がある。おそらく、心理的にもまっさらな壁に書くのは気が引けるが、誰かが書いた後だとやりやすくなってしまうのであろう。したがって、もし落書きを見つけた場合は、除去できるのであればすぐに除去し、それ以上書かれないようにすることが重要である。
また、人の目が届きにくいところほど落書きの被害に遭いやすい傾向がある。東大寺大仏殿も、職員の目が届く正面入口付近の柱には落書きが少ないものの、大仏の背後にある柱ほど落書きが多く見られた。城の御殿や櫓、寺院の本堂などは、総じて奥まった部屋や日陰になっている場所ほど落書きが目立つようである。
落書きの被害を防ぐためには、職員が定期的に監視し、目を配るようにするしかない。なかには、24時間体制で監視ができるライブカメラを設置している寺院もある。これなら、落書きのみならず、ほかの犯罪の抑止効果も期待できるだろう。
国宝・重要文化財を探訪するのは、日本の文化に触れるうえで意義深いことだ。しかし、日本の文化財は木造建築が多く、落書きが深く刻まれてしまうと、完全に除去することは難しい。文化庁も啓発活動を積極的に行うべきだし、旅行者側も“記念”だからといって一時の気持ちで落書きを行わないようにしたいものである。











