「妻にも言えない」60歳を前に500万円が元本割れ――企業型DCの“一発逆転”が裏目に出たワケ【専門家が助言】
コロナ・ショックで含み損50万円超、売却後に株価は回復
ところが間もなく、世界を「コロナ・ショック」が襲う。株価は急落し、運用資産は元本割れを起こした。株式投資に慣れていなかった隆志さんは、含み損(※売却していない状態での損失)が50万円を超えたところで、耐えきれなくなってすべての投資信託を売却。定期預金に戻してしまった。
その後の展開は皮肉だった。株式市場はほどなくして回復。売却時に2万円を下回っていた日経平均株価はその後上昇を続け、2025年末には5万円台に達した。「あのとき株式投信を手放さなければ」という後悔が今も隆志さんの頭から離れない。
そして2026年3月、中東地域の紛争を背景に株価が再び値を下げる中、「老後資金を増やすには、結局どうすればいいのか……」と、投資の難しさをかみしめている。
専門家からのアドバイス/敗因は「急ハンドル」と「狼狽売り」
隆志さんはどこで間違えたのか。金融教育家の上原千華子さんはこう分析する。
「20年近く企業型DCをやって損失が出ているというのは、正直、少数派だと思います。失敗の原因は二つ。一つは、60歳を前にして資金をすべてリスク資産に移すという急ハンドルを切ったこと。もう一つは、一時的な下落にうろたえて損失を確定させてしまったことです」
投資でお金を増やすために広く推奨されている方法は、投資先や投資のタイミングを「分散」し、10年以上の「長期」にわたって利益が利益を雪だるま式に生む複利効果を得ながら運用することだ。隆志さんのやり方はこれらをことごとく外してしまっていた。
「同僚の話を聞いて、株式投資のハイリターンな面だけに目が向いてしまい、ハイリスクな面を十分に理解していなかったのでしょう。焦りは冷静な判断力を鈍らせます。本来なら『半分だけ株式、半分は定期預金』という段階的な移行もできたはずですが、焦燥感がその選択肢を消し去ってしまったのです」
あきらめないで。60歳以降も「運用」は続けられる
では、同じような失敗をしてしまった人は、もう手遅れなのだろうか。上原さんは「そんなことはない」と断言する。
「企業型DCは、会社の規約にもよりますが、退職して掛金の拠出が止まった後も、資産の運用は継続できることが多いのです。受け取りも、原則として60歳から最大75歳まではいつでもできるので、一時的に暴落しても市場の回復を待つという選択肢があります」
例えば、数年間そのまま運用を継続したり、あるいはいったん引き出した後にNISA(少額投資非課税制度)などを活用して長期投資に切り替えたりすることで、複利の効果を得ながら損失を取り戻せる可能性は十分にあるという。
「隆志さんも少額でいいのでまた株式投信で積立てを始めてみることをおすすめします」
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