「選ばれる強豪」「選ばれなくなる強豪」…高校野球“総合力の時代”が始まった

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「選ばれる強豪」と「選ばれなくなる強豪」の分岐点

 ここまで4校を取り上げてきたが、今後一気に人気が高まりそうな存在もある。大谷翔平(ドジャース)の母校として知られる花巻東だ。これまで同校は、基本的に地元・岩手出身の選手を中心にチームを編成してきた。しかし昨年から方針を転換。この4月には全国から実力ある選手が入学してくるという。勢力図に変化をもたらす可能性がある動きと言える。もっとも、人気上昇の理由は単に大谷の存在だけではないようだ。

「もちろん、大谷翔平や菊池雄星(エンゼルス)の存在は大きいですが、それだけではありません。設備は当然素晴らしいですし、甲子園に出場できるチャンスも比較的多い。そうした土台はしっかりしています。さらに進路面でも、東大に合格する選手が出たり、佐々木麟太郎のように米スタンフォード大へ進むケースがあったりと、他校にはあまり見られない実績がある。野球の先にある選択肢を示している点は大きいと思います。佐々木洋監督の、高校野球の枠にとどまらない柔軟な考え方に魅力を感じている選手や保護者も多いようです。それに、いまだ成し遂げられていない『岩手から日本一』を達成したいという思いで入学を志す選手も少なくないのではないでしょうか」(前出の中学野球指導者)

 花巻市には、2024年のドラフトで史上最多となる6人が指名された富士大がある。花巻東は同大と頻繁にオープン戦を行い、実戦を通じてレベルアップを図っている。高校と大学というカテゴリーを越えた交流が日常的に行われている点も、他校にはない強みの一つだろう。

 今回は5校を取り上げたが、勢力図はなお流動的だ。昨春の選抜では創部3年のエナジックスポーツが初出場を果たし、話題を集めた。また今年4月には、大手進学塾を運営する四谷学院が通信制高校として野球部を創部するなど、新たな“プレーヤー”の参入も続いている。

 少子化が進む時代にあって、野球部の存在は競技力のみならず学校経営やブランド戦略とも直結する。甲子園、進路、育成環境、そしてブランド力――。それらをいかに備えるかが、これからの高校野球における“盟主”を決める指標となるのではないか。

 しかし同時に、どれほど伝統を誇る学校であっても、その評価は決して不変ではない。昨夏の広陵、今春の日大三の不祥事が示したのは、実績や歴史だけでは信頼を守り切れない現実だ。選ばれる強豪であり続けるために求められるのは、健全な運営と透明性を備えた“総合力”である。「選ばれる強豪」と「選ばれなくなる強豪」。その分岐点は、すでに見え始めている。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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