群馬から千葉まで「ナンバープレートのない車」で爆走 「昭和の大脱走」脱獄囚2人が逮捕後に漏らした“納得すぎる感想”

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車から飛び降りてドブを逃走

 船橋署のパトカーと捜査員はスカイラインを見失った鎌ヶ谷市方面に集中した。ところがまた、2人の車はとんでもない所に姿を現したのである。国道14号線の船橋市寿町の交差点――船橋署まで800メートルの地点である。

 見つけたのは本署へ向かう途中、オートバイでそこを走っていた巡査だった。見た瞬間、巡査は目を疑った。「ナンバーブレートのない車」が堂々と眼前を走っている。巡査は鎌ヶ谷方面の話を聞いていなかったため、ヘルメット姿の後藤と田中を成田闘争の関係者と疑い、職務質問を試みた。すると2人は車を飛び出し、幅1メートル弱のドブに飛びおりた。

 巡査の追跡は失敗に終わったが、後藤は間もなく捕まった。特別機動捜査隊の機動鑑識班がドブの中の「ゲソ(足跡)」をたどった先、民家の物置と塀の間で覚悟したようにうずくまっていた。これが2時50分ごろのことである。

 あとは田中。ドブのドロの中に、はいていたブーツが残っていた。警察犬に後をつけさせたが、途中でわからなくなった。

 各道路、80カ所の検問を続ける一方、県警本部は、ラジオ関東でタクシーや一般ドライバーに協力を呼びかけた。県警本部で動ける者も全員出動。機動隊は成田に少し残して大半を投入し、あとは各署の非番の者、交通機動隊、捜査隊など、動員した警察官は約2000人にのぼった。千葉県全体の警察官数の3分の1である。

脱走してよかったことは…

 出動車両は約100台。県警の捜査一課長が乗ったヘリコプターが船橋の上空を飛び回り、県警本部の司令室では本部長と刑事部長が指揮に当たった。しかし、時間は刻々と過ぎていく。暗くなったらおしまいだ。

 怪しいとみられる一帯に警察が集中した。そこは埋立地で、工場と住宅がひしめき、入江には昔ながらのベカ舟(のり採り舟)が浮かんでいる。そこを車が走りまわり刑事が歩きまわる。町内会の男たちも、家の周囲で魚箱の山を引っくり返してみたり、車のトランクを開けてみたり、物置をのぞいたり。

 すると夕方5時すぎ、あるアパートの大家(63)が異変に気付いた。玄関わきの花壇のレンガが1個、動いている。足跡と匍匐前進らしき跡を追うと、ブロック塀と家の狭い空間、暖房用ボイラーの陰で、田中はついに見つかった。

 逮捕後、警官に「ナンバープレートのない車で国道をよくも走ったものだな」と言われた2人は一瞬ポカンとした。彼らは、ナンバーが当然付いていると思っていたのだった。そしてこう漏らした。

「脱走してよかったのは、タバコが吸え、ビールが飲めたことだけだった……」

 この脱走で、彼らの服役期間は5~6年ほど長くなるだろうといわれる。トクをしたのは便乗強盗ぐらいで、あとは誰もが……ゴクロウサンであった。

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 第1回【「オイチニ」の掛け声で淡々と走り去った2人、実は脱獄囚だった…警察のミス多発、最初から最後まで珍妙すぎる「昭和の大脱走」】では、ゴルファーが居合わせた“白昼堂々の逃走”と、そこから始まる脱獄囚2人vs.警察の前半戦を伝えている。

デイリー新潮編集部

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